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独居認知症高齢者の自立生活を支える訪問看護の実践ガイド (19 ページ)

公開元URL https://www.tmghig.jp/research/publication/houmon-kango/
出典情報 独居認知症高齢者の自立生活を支える訪問看護の実践ガイド(4/8)《東京都健康長寿医療センター》
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STEP 3 ■ 多職種と協働した個別的支援

13

看護計画

実践のためのヒント

日常の体調管理や生活の安全の支援を通して、
本人が望む暮らしを支える看護計画を立てる

利用者が生活の中で大切にすることは何でしょ

利用者が当たり前と感じている活動も多く、それ

⑥精神的・心理的な支援、⑦地域の医療介護サー

をあえて
「大切にしている」
と言葉にしないことも

急搬送されました。腰椎圧迫骨折との診断で、入院中にコルセットを作り、
リハビリを

クスする時間のように、当たり前の習慣を失うこと

して自宅に退院しました。入浴が好きなDさんは、夏でも毎日湯船に浸かりたいと言

います。
しかし、自宅の浴室は床が滑りやすく、浴槽は深く、いかにも転びやすい環境

です。ケアマネジャーを中心に手すり設置等の家屋改修を進めることにしました。同

時に、入浴の回数や時間、方法、その際の支援について検討し、Dさんが入浴を安全

に楽しみながら、清潔を維持するための看護計画を検討することにしました。

本人の望む暮らしを支える
看護計画を立てる

看護計画には、①自宅での生活支援や自立支援、

②病状の管理と健康維持、
③家族や介護者への支

ひとり暮らしをするDさん
(80歳・女性・中等度認知症)
は、浴室で滑って尻もちを

つき、痛みで動けなくなっていたところ、
うめき声に気づいた近所の人が見つけて救

3 包括的な看護計画

うか。大切にすることには、生きるための日課や、

日常に安定をもたらす生活習慣などを含みます。

Scene

80歳女性
(中等度認知症)

1 暮らしを言葉にする

多いです。ですが、例えば、湯船に浸かってリラッ

援、④生活環境の安全確保、⑤社会生活の支援、
ビスの活用、
⑧緊急時の対応が含まれます。

はつらいですし、シャワーを浴びて清潔を維持す

4 評価と見直し

的なアセスメント
(項目5〜10参照)
を通して、利

看護計画に沿って支援を進めた後に、目標を達

ることでは必ずしも代替手段になりません。包括
用者が望む暮らしを具体的に把握します。

成できているか評価して、必要ならば計画を修正

します。例えば、
「入浴を安全に実施して、利用者が

楽しみ、清潔を維持する」
という目標に対して、現

2 能力に応じた自立の支援計画
利用者自身が持っている力を生かし、引き出す

方法を検討します
(項目15参照)


在の入浴の頻度や時間帯、方法、支援で達成でき

ているでしょうか。利用者の反応や希望を確認し
て検討します。また、認知症が進行すれば、必要な

支援も変わります。認知・身体機能を再評価して、
計画を見直すことが大切です。

期待される効果

項目の説明

利用者の状況や希望を反映させて、具体的かつ実践可能な看護計画を作成して実施することによって、
個別性の高い支援を提供することができます。その結果、
利用者の健康状態を維持・改善し、
安全な生活環
境を確保し、
QOLを高めます。
また、
利用者の自立を支えることで、
利用者が自尊心を保持できる効果が期
待されます。

この事例が示すように、認知症のある人への訪問看護の目標は、利用者が望む自宅での生活を、可能
な限り自立した形で維持できるように支えることです。そのために、利用者の意向に沿って、自立性を尊
重しつつ、体調管理や生活の安全など生活全般にわたって、支援の目標や方法を体系的に整理します。
認知症が進行して自己管理が困難になった部分を特定して、安全かつ効果的な方法で対応する看護計

課題と注意事項

画です。この時、支援者本位になって、利用者の希望やできることをないがしろにしてしまわないように、
常に目標に立ち戻って考えます。

認知症のある人の支援の難しさは、料理と火事のように、自立支援と健康・安全のリ
スク対策が対立しやすいことにあります。
リスク対策に傾くと、できることを
「取り上げ
る」
ことになりかねません。同居者による見守りがない場合は、特に両者のバランスを

この項目がなぜ大切か
利用者の情報収集→アセスメント→支援目標を立案→支援の提供→効果の評価、
という看護計画のプロセスは、支援を
効率的かつ効果的に提供するために大切です。適切な看護計画は、認知症によって生じた健康と生活の個別のニーズに対

取ることが難しくなります。利用者の状況や希望に合わせて、多職種チームで知恵を出
し合って、利用者に合った個別の工夫を盛り込んで支援を計画します。また、支援目標
に立ち戻って、自立支援と健康・安全のリスク対策のバランスが取れているか、支援中
の気づきを生かして新たな工夫ができないか、看護計画を検証することが大切です。

応します。同時に、利用者に残された力を発揮して、
能力に応じた自立生活を送ることを支えます。

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