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令和6年度予算の編成等に関する建議 参考資料(2) (11 ページ)

公開元URL https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia20231120/zaiseia20231120.html
出典情報 令和6年度予算の編成等に関する建議(11/20)《財務省》
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こども・子育て政策におけるPDCAの推進

資料Ⅱ-1-11

○ 今回の「加速化プラン」(事業規模:3兆円半ば)によって、我が国の少子化対策は、画期的に前進することとなるが、広く国民
の負担を求め、巨額の予算を投じる以上、政策が当初想定した効果を発揮しているか、EBPMの観点も踏まえながら検証を行い、
適切に見直しを行うなど、PDCAを推進しながら進めていくべき。
◆少⼦化の傾向を反転させる取組についての機械的試算

(経済財政諮問会議における民間議員提出資料より作成)

取組
●家族関係社会⽀出(児童
⼿当等の現⾦給付、保育サー
ビス等の現物給付)の拡充
●⾼等教育の公的⽀援の拡充
●住宅⽀援の拡充

●男性の家事参加の増加

●若年世代の所得向上

出生率の上昇幅

2060年段階の人口増加効果

GDP⽐1%程度(約5兆
円)の⽀出増加により
出⽣率が0.05〜0.1程度上昇

現在の出⽣率で推移した
場合と⽐べ、⼈⼝が
90〜180万⼈程度増加

◆データが語る子育て支援のワナ(渡辺安虎氏)(抄)

(エコノミスト360°視点 日本経済新聞 令和5年8月10日)

(前略)
● 子育て支援策のうち、この25年ほどで一気に広がったのが子ども医療費の無償
化だ。一定年齢までの子どもについて、健康保険でカバーされない2割や3割の自己
負担分を市区町村や都道府県が負担し、実質無償で医療や薬を受け取れる政策
である。(中略)
● この政策はどのような効果をもたらしたのだろうか。実は無償化政策のデータに基づ
く効果検証を、政府はこれまで実施していない。
● 東大の飯塚敏晃教授と重岡仁教授は、市区町村レベルでの無償化の状況の推
移データを作成した上で、患者レベルの治療の経過がわかるレセプト(診療報酬明
細書)データと結合して政策効果を推計する論文を発表している。

OECD平均並まで家事時
間の男⼥格差改善により
出⽣率が0.1程度上昇

2%賃上げ継続により
出⽣率が0.1程度上昇

若年層への分配強化により
出⽣率が0.1程度上昇

現在の出⽣率で推移した
場合と⽐べ、⼈⼝が
180万⼈程度増加

● 結果は予想される通り、子どもにかかる医療費が増加していた。さらに健康な子
供の受診回数が増え、不要な抗生物質の処方や、緊急性が低いのに救急外来を
利用する「コンビニ受診」も増えていた。他方、無償化の効果については、死亡率や
入院確率に変化はなく、成長後の健康状態にも影響がなかった。
● つまり医療費の無償化は子どもの健康状態を特段改善しないにもかかわらず、
過剰な医療費支出を生み出しているわけだ。将来的な財政負担を増やす非効率
な政策はどのように広がったのだろうか。

現在の出⽣率で推移した
場合と⽐べ、⼈⼝が
370万⼈程度増加

(出所)2023年4月26日 経済財政諮問会議
資料2-1「成長と分配の好循環を生み出す経済財政政策に向けて(参考資料)」
3ページ「EBPMによる政策効果分析の活用の可能性」より抜粋

● 重岡氏と筆者との共同研究からは、この政策が自治体の選挙を通じて広がってき
たことが判明した。さらに単に選挙のタイミングで広がるのではなく、周囲の市区町村
より無償化の対象年齢が低い選挙の場合に広がっていた。(中略)
● では、経済的ポピュリズムの結果ともいえる政策に改善余地はあるだろうか。飯塚
氏と重岡氏の論文は、子どもの診療に1回200円の自己負担を設けるだけで、過剰
な需要を抑えられることを示している。自治体間の競争が広がってしまった現状を
考えると、国が関与して政策を改善することが必要だろう。
● より大きな問題は、このような分析を政府が行っていないことだ。異次元の少子
化対策は新たな挑戦であり、間違いや失敗が生ずることは避けられない。であれ
ば、事業費の0.1%でよいのでデータに基づく政策改善のための予算を確保する
など、政府が改善を進められる体制を整えることが重要だろう。