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資料1-2-7診断基準等のアップデート案(第49回指定難病検討委員会資料) (58 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25626.html
出典情報 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第49回 5/16)《厚生労働省》
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119 アイザックス症候群
○ 概要
1.概要
アイザックス症候群は、持続性の四肢・躯幹の筋けいれん、ミオキミア、ニューロミオトニアを主徴とする疾
患である。電位依存性カリウムチャネルに対する自己抗体(抗 VGKC 複合体抗体)が関連する。より重症型
のモルバン症候群は、上記に加え、不整脈、尿失禁などの多彩な自律神経系の症状と重度の不眠、夜間
行動異常、幻覚、記銘力障害などの中枢神経症状を呈する。また、健忘、失見当識障害、てんかん発作な
ど中枢神経症状のみを呈する抗 VGKC 複合体抗体関連脳炎という疾患単位もある。
2.原因
発症機構については不明である。一部の症例に胸腺腫が関連している。免疫介在性に末梢神経終末部
の電位依存性カリウムチャネル(VGKC)の機能障害が起こるとされている。抗 VGKC 複合体抗体の陽性率
は、約3割程度である。
3.症状
アイザックス症候群の中心となる症候は末梢運動神経の過剰興奮性によるものであり、四肢、躯幹に見
られる筋けいれん、筋硬直、ニューロミオトニア(叩打性ミオトニアを認めない神経由来の筋弛緩遅延)と、ミ
オキミア、線維束れん縮などの不随意運動を特徴とする。持続性の筋けいれん・筋硬直は筋肥大を起こす
こともあり、更に強くなると筋力低下が見られることもある。運動症状のみならず、疼痛、しびれ感などの感
覚異常もしばしば見られる。時に複合性局所疼痛症候群様の激しい痛みで日常生活動作が制限される。
その他に自律神経の興奮性異常によると思われる発汗過多、皮膚色調の変化、高体温を示す場合もある。
筋けいれん・筋硬直が高度となり、疼痛とともに、歩行や体動が困難となり日常生活に重大な支障を生じる。
一方、モルバン症候群は、アイザックス症候群の典型的な症状に、大脳辺縁系の異常を示唆する空間的・
時間的記銘力障害、幻覚、近時記憶障害、不眠、複雑な夜間行動障害や、不整脈、便秘、尿失禁などの多
彩な自律神経症状を伴う。
4.治療法
根治療法は確立していない。アイザックス症候群関連疾患はいずれも希な疾患で、RCT 等のエビデンス
はない。もし胸腺腫や肺癌を合併している場合は、その切除により臨床症状の改善が見られる。しかし切
除後もある程度症状が持続することがあり、その際には後療法として免疫療法や対症療法が必要なことが
ある。
基本的な治療方針は、日常生活にさほど影響がなければ、まずは、末梢神経のナトリウムチャネルを抑
制することで過剰興奮性を抑える抗てんかん薬などによる対症療法を行う。
抗 VGKC 複合体抗体陽性で、自己免疫関連と考えられる症例、難治症例や、日常生活に著しい支障を来
す場合は、血漿交換による抗 VGKC 複合体抗体の除去が有効である。重症筋無力症合併例では、血漿交
換後のステロイドとアザチオプリンの併用での後療法が推奨されている。また、一部の症例でリツキシマブ

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