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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (81 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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7.

がんのリハビリテーション診療

【総論】
1.がん医療におけるリハビリテーション診療の意義
がん患者ではがんの進行もしくはその治療の過程で、認知障害、摂食嚥下障害、発声障害、運動麻
痺、筋力低下、拘縮、しびれや神経因性疼痛、四肢長管骨や脊椎の病的骨折、上肢や下肢の浮腫など
様々な機能障害が生じ、それらの障害によって、移乗動作、歩行や日常生活動作(Activities of daily
living:以下 ADL)に制限をきたし、QOL の低下をきたしてしまう。がん患者の QOL 向上を目指
すサポーティブケアの一環として、リハビリテーション診療を実施することで、身体機能や生活能
力の維持・改善を図ることは、がん患者の療養生活の質の維持・向上に非常に重要である。
がんのリハビリテーション診療はがん患者の QOL 向上を目指すサポーティブケアの一環とし
て、後遺症・合併症の軽減を目的とした治療前や治療中のリハビリテーション治療のみならず、近
年では、がん関連倦怠感(Cancer-related fatigue:CRF)、がん悪液質(Cachexia)など、がん特
有の身体症状への対応、とくに疼痛や全身倦怠感などの症状緩和や自宅での療養生活への支援な
ど、そのニーズは拡大しつつある。がんサバイバーは今後さらに増加していくことから、障害の軽
減、生活能力の改善を目的としてリハビリテーション診療を行う必要性はさらに高まっていくこと
が予想される。
2.高齢がん患者におけるリハビリテーション診療の重要性
内閣府の調査では、65~74 歳と 75 歳以上の被保険者について、それぞれ要支援、要介護の認定
を受けた人の割合をみると、65~74 歳で要支援の認定を受けた人は 1.4%、要介護の認定を受けた
人が 3.0%であるのに対して、75 歳以上では要支援の認定を受けた人は 9.0%、要介護の認定を受け
た人は 23.5%となっており、75 歳以上になると要介護の認定を受ける人の割合が大きく上昇する
1)。

米国においても、地域社会に住むメディケア受益者のうち、65 歳以上の 27%、80 歳以上の 35%
が排尿排便、移乗、食事、整容、入浴、着替えなどの ADL のうち 1 項目以上を行うことができない
という報告がある 2)。さらに、高齢がん患者の 75%が電話を使う、旅行、買い物、食事の準備、家
事、薬の服用、金銭管理を行う能力など、1 項目以上の手段的日常生活活動(Instrumental ADL: 以
下、IADL)に支援が必要であることが示されている 3)。
高齢がん患者は、ベースとなる機能的能力のレベルが多様な集団であり、がん以外の慢性疾患と
共存し、治療がより複雑化する可能性がある。従って、高齢者のアセスメントでは、医学的な問題だ
けでなく、認知・心理社会的・機能的な評価も含め、老年医学やリハビリテーション診療と協働し
て、集学的チームでケアに取り組むことが重要である。高齢がん患者に対してリハビリテーション
治療を行うと、生理的・身体的・精神的健康が改善することが示されている 4)。
3.がんのリハビリテーション医療の定義
「がんのリハビリテーション医療とは、がん治療の一環としてリハビリテーション科医、リハビ
リテーション専門職により提供される医学的ケアであり、がん患者の身体的、認知的、心理的な障
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