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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (31 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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3. 高齢者でがんを疑ったときの診断的アプローチ・病期決定のための検査
(1)画像検査
Q1

高齢者がん患者の画像検査の実施にあたり、その適応・条件は何か?

A1

画像検査の益が、その害を上回るとき、検査適応がある。

【解説】
本邦は CT・MRI 検査などの画像診断機器へのアクセシビリティが他国に比べて高いことが利点
の一つであり 1) 、必要な画像検査を必要なタイミングで行うことができることが多い。
画像検査の益が、その害を上回るとき、検査適応があると考えることができる。病変の検出や病
期決定が画像検査の主な益であるが、検査下流の治療やマネジメントの転換も含めて益を検討しな
くてはならない。いくら画像検査の病変検出精度が高くとも、画像検査の結果が以後の診療方針に
影響を与えないのであれば(例:病気が見つかっても何の治療もしない)、その患者に検査適応はな
いと考える。
また、画像検査の益を考える上で重要なのが、検査前確率(検査を受ける前の、その患者の「病
気がありそうな確率」
)である。検査前確率が非常に低い、あるいは非常に高い場合は、検査を施行
しても検査後確率は検査前確率に準じた値にしかならず、検査の有用性は低い 2) 。とある患者が肺
転移を有する検査前確率は、原発巣の状態によって異なるため、原発巣の状態に応じて検査適応が
異なる

3)。なお、検査が必要と考えられる検査前確率(検査閾値)は、画像検査の侵襲性や、検出

を目的としている疾患の危険性によっても変化する。例えば侵襲性の高い検査(カテーテル血管造
影など)の検査閾値は、侵襲性の低い検査(超音波検査など)の検査閾値よりも高くなり、診断の
遅れが生命を脅かす疾患(くも膜下出血など)を検出する目的の検査閾値は、そうではない疾患(変
形性腰椎症など)の検査閾値よりも下がる。高齢者の場合は併存疾患が存在することが多いため、
目的とする疾患以外の疾患の検査前確率も考慮する必要がある。
画像検査の害としては、検査の有害事象(造影剤アレルギー等)
、被ばく、検査時間などの患者の
身体的負担などに加えて、間違った診断分類(偽陰性と偽陽性)によって起こりうる害や経済的負
担も含まれる。高齢者の場合は特に検査自体による身体的負担が若年者よりも大きいため、より慎
重な検討が必要である。逆に高齢者では被ばくによる影響が小児や若年よりも少ない。
最終的には個々の患者に対して、画像検査の益と害のバランスを総合的に考慮して適応を決める。
文献
1) OECD (2018), Computed tomography (CT) scanners (indicator). doi: 10.1787/bedece12-en
(Accessed on 5 August 2019)
https://data.oecd.org/healtheqt/computed-tomography-ct-scanners.htm
2) Medow MA, Lucey CR. A qualitative approach to Bayes' theorem. Evid Based Med. 2011
Dec;16(6):163-167.
3) 画像診断ガイドライン 2016 金原出版。第 8 章 P514
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