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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (210 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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***【公開討論会から質問に対してのコメント】

Q「前立腺がんの診断になった=手術を受ける」ではなく、診断された段階で治療を受ける
か否かの選択肢を個々に応じて判断するというのでどうでしょうか?
診断された段階で、治療を受けるか否かの選択肢を個々に応じて判断する というのは、現状で行
われている診療行為の状況です。これについては議論の余地がないところであり、しごく当然のこ
とです。
病気になった患者さんは、ご自分の病状や将来について知りたい情報を医療者から提供を受けて、
それに応じて判断する ということは当然のことです。Watchful waiting という方法で経過観察を
することと、いきなり手術をした場合で予後に大きな差がないという報告が続き、そういった選択
肢が増えたことは喜ばしいことです。
ただし、一旦がんと診断された場合に、完全な無治療を選択する方はそれほど多くないことは事実
でしょう。「がん」と診断されてしまうと、疾患に対する恐怖が先にたってしまい、発病前は冷静に
考えられたかもしれないことが、わらにもすがりたくなるのは当たり前のことだと思います。
検診の設定はあくまで健常人を対象にしているものであり、検診を受けるまではご本人は覚悟も何
もできていません。患者さんと違い、検診の段階ではまだ深刻さに欠けるため、受診される方は、異
常が指摘されたらどうしようという心構えがないので、いざ異常が指摘されると、パニックになり
やすい、冷静な判断ができないという特徴があります。
こういった問題は世界共通に見られることなので、異常が指摘されて病院に行った後に、詳しい説
明を聞くよりも、検診を受ける段階できちんとした情報を提示されて、医療者と一緒に考えて意思
決定を行う shared decision making が推奨されてきています。
shared decision making は、意思決定の方法として、今まで診療で行われてきた informed consent
よりも、受診者の側に立ったものであり、医療者が思い描いていたものとは異なる着地点に到達す
るための話し合いであり、当然時間や人手がかかることです。米国では診療保険を使って検診が行
われる唯一の国なので、その環境は整っていますが、日本は全く異なり、人間ドックの場でもあっ
ても、受診時に情報提供や話し合いは行われていません。今後 shared decision making に基づいて
がん検診を受診すべきか否かが決定される世の中に代わっていくべきだと思いますが、一足飛びに
できる状態とは言えません。

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