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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (41 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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Q2-4

下部消化管内視鏡検査に伴う偶発症に対する対策は?

A2-4

下部消化管内視鏡検査では、検査前に被験者の状態を充分に把握した上で、前処置や検
査を行うことを強く推奨する。

【解説】
下部消化管内視鏡検査は前処置を含め身体的侵襲を伴う検査である。下部消化管内視鏡検査の偶
発症として、出血、裂創、大腸穿孔、血圧低下、ショックなどがある。日本消化器内視鏡学会の調
査では、下部消化管内視鏡による偶発症は340件、そのうち大腸穿孔は200件 (59%)、そのうち死亡
例は13件(6.5%)と報告されている1 )。
i) 検査前
高齢者は腸の蠕動運動が低下し、便秘傾向の患者が多い。したがって、下部消化管内視鏡検査を
行う際は、排便の状態や全身状態をよく把握することが必要である。便秘やそれに伴う腹部症状が
みられる場合には、検査前にレントゲンやCT検査を行い、原因疾患に伴う腸閉塞や腫瘍などの粗大
病変が無いかを、精査検索することも重要である2)。
ii) 前処置
前処置は、従来から用いられているBrown変法のほか、ポリエチレングリコール電解質製剤
(PEG)を用いるPEG法など、さまざまな方法が用いられている。Brown法は、主にクエン酸マグネ
シウム (マグコロール®P)を使用し、低脂肪・低残渣食による食事制限と組み合わせて前処置を行う
方法である。副作用として高マグネシウム血症があり、腎機能障害例では禁忌とされている。PEG
法は、高張PEG (モビプレップ®)、等張PEG (ニフレック®)を使用する方法であり、Brown法と比較
して食事制限がなく、洗浄効果が優れており、現在広く用いられている。しかしながら、日本消化
器内視鏡関連の偶発症に関する調査では、 経口腸管洗浄剤による腸閉塞・腸管穿孔などの偶発症は
22.2%、死亡例3例と報告されている1)。2003年9月に出された厚生労働省からの注意喚起では、特
に高齢者において内服時の十分な観察を行うように提唱されている。したがって、独居や認知障害、
誤嚥のリスクがある場合には、高齢者が自宅で内服するリスクを考え、前日入院や当日朝来院のも
と家族同伴や看護師の目の届く場所で前処置を見守る必要性があり、病院体制に応じた対応がとら
れている2)。また、他の画像検査にて、進行性大腸癌の疑いがある場合には、腸閉塞や穿孔のリスク
が増すため、前処置はおこなわず、浣腸のみで内視鏡検査を行うことが望ましい。
iii) 検査時
高齢者においては、小柄でやせ型の方、腹部手術歴のある方、加齢に伴い腸管が弛緩した方が多
く、内視鏡が直腸から盲腸まで挿入困難な場合がある。その場合、過去の検査状況を確認した上で、
細径スコープの使用やCO2送気での検査を行うなどの工夫を行う。細径スコープは、腸管への抵抗
力が通常スコープよりも小さく、小回りも効くため挿入困難例に有効であり、CO2送気は通常送気
よりも腹部膨満感を軽減できる。しかしながら、高齢者においては加齢に伴う呼吸機能低下により、
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