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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (197 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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(4)高齢がん患者の外来診療を支える新しいシステム

Q1

PRO とは何か?

A1

Patient-Reported Outcome:有害事象や Quality of life に対する患者自身による主観的
評価をいう。

【 解説 】
がんの臨床や研究における有害事象の評価は、主に医療者による客観的な評価尺度を用いて行わ
れてきた(NCI-CTCAE など)。しかし、医療者による評価は患者自身による評価と比較して過小
評価される傾向がある事が報告されるようになってきた 1)。また、がん薬物療法の有害事象には、
血液データや皮膚毒性の変化などのように客観的な評価が容易なものだけでなく、倦怠感や味覚障
害、食欲不振の変化などのように客観的な評価が困難なものがあり、軽度であっても長期に持続す
ると QOL 低下に影響する可能性があることも指摘されている。
1990 年代以降、医療や新薬開発において Patient-Centered あるいは患者参加型医療といった考
え方が欧米を中心に注目されており、近年では特に患者自身による有害事象や QOL(Quality of
life)の主観的評価(Patient-Reported Outcome;PRO)の重要性が認識されている。米国では
2009 年に規制当局である FDA がガイダンスを作成し、「臨床医や他の誰の解釈も介さず、患者か
ら直接得られる患者の健康状態に関する報告」と定義している 2)。このような背景のなか、米国
National Cancer Institute(NCI)では、がん臨床試験の有害事象に適応した評価尺度である PROCTCAE™(version1.0)を開発 3)しており、その後、日本語版の言語的妥当性 4)や計量心理学的
な検討 5)が実施され、2017 年 2 月に NCI ホームページに公開されている 6)。
本邦の臨床試験や日常臨床において、PRO による有害事象情報の収集は紙ベースで「患者日
誌」のようなタイプが広く用いられており、がん薬物療法の安全な継続のために一定の効果はある
と考えられる。しかし、日常臨床の限られた診療時間でアナログで記載された日記から症状のトレ
ンドを直感的に理解するためには手間や熟練を要すること、また紙媒体であるがゆえに、多職種に
よるチーム診療や床研究に活用するには多くのバリアがあった。

しかし近年、治験においてはデータ収集を電子デバイスによって実施すること(electric PRO;
ePRO)が多くなり、2013 年には FDA も原データを電子的に収集することを促すガイダンスを作
成している 7)。将来的には、この仕組みを日常臨床においても実装し、在宅期間の患者情報を効率
的に診察室にフィードバックすることによって、より質の高いがん診療が提供されることが期待さ
れる。

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