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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (149 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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Q5

高齢者では、非高齢者と比較して放射線治療後の晩期有害事象の頻度や重症度は増加す
るか?

A5

高齢者で晩期有害事象が増加するとの報告が散見されるものの、現時点では年齢と晩期
有害事象の関連に関して明確な結論を出すための十分な科学的根拠は存在しない。

【 解説 】
高齢者では臓器予備能が低下しているため、放射線療法による晩期有害事象をきたしやすいと信
じられてきた。血流障害が放射線療法による晩期有害事象発現に大きな役割を果たすことはよく知
られており、加齢に伴って血管が狭小化することで晩期有害事象のリスクも増加すると考えられて
いる。しかし、年齢と晩期有害事象の関連に関しては未だ不明な点が多い 1)2)。
細胞実験や動物実験では、年齢と放射線療法による晩期有害事象の発生に明らかな相関は示され
ていない

1)。また、臨床報告においても、合併症を有さず全身状態が良好である高齢者においては

放射線療法の晩期有害事象は非高齢者と同程度とする報告が多い 1)。
一方で、高齢者で晩期有害事象が増加するとの報告も散見される。
限局期小細胞肺癌に対する予防的全脳照射における 3 つの線量分割をランダム化比較した RTOG
0212 試験において、高齢は認知機能低下の有意なリスク因子であり、認知機能低下のリスクが 1 歳
の加齢ごとに 12%上昇すると報告されている 3)。
Parsons らは、頭頸部がんに対し放射線治療を受けた患者 131 人における放射線性視神経炎の発
生について解析し、視神経に 60 Gy 以上照射された患者における放射線性視神経炎発生の頻度は、
50 歳以下では 0% (0/32)
、51-70 歳では 13% (7/56)、71 歳以上では 56% (9/16)であった 4)。
また、Machtay らは局所進行頭頸部がんへの化学放射線療法に関する複数の臨床試験のデータを
用いて Grade 3 以上の晩期有害事象(経管栄養を要する嚥下困難、誤嚥性肺炎など)発生のリスク
因子を解析し、高齢は有意なリスク因子であり、晩期有害事象のリスクが 1 歳の加齢ごとに 5%上昇
すると報告している 5)。
このように、高齢者では放射線治療後の晩期有害事象が増加することを示唆する報告が幾つか存
在するものの、現時点では年齢と晩期有害事象の関連に関して明確な結論を出すための十分な科学
的根拠存在しない。高齢者においては正常組織の線量を低減するために治療計画に細心の注意を払
うことが望まれる一方で、過剰に有害事象を懸念して必要な放射線療法を回避することは推奨され
ない。

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