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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (105 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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Q1

高齢者の骨転移の外科的治療にはどのようなものがあるか?

A1

非高齢者と同様に外科的治療としては、①切除および人工骨による再建術、②内固定(骨
接合)術、③脊椎に対する固定術の 3 つがある。

【 解説 】
1. 術式
骨転移に対する治療方針、手術適応、術式選択は高齢者も若年者も同様である。手術には大別す
ると三つある。第一に長管骨に対する骨転移巣切除及び人工骨置換、第二に長管骨病的骨折または
切迫骨折に対する内固定、第三として脊椎転移に対する後方固定である。
2. 長管骨転移:予後と術式の選択
長幹骨に対しての手術は大腿骨に対して行われることが多く次いで上腕骨である。手術術式は骨
転移が発症する前の状態と予後予測によって選択する。骨転移の発症前から、加齢や内臓転移、他
の骨転移により下肢なら歩行不能、上肢なら使用不能であり、手術をしても機能再獲得が期待でき
ない場合には除痛のために内固定を行う。
一方手術により機能再獲得が期待できる場合は予後により手術法を選択する。予後が 1 年以上の
場合は骨接合のみではインプラントごと再骨折をきたす場合があるために

1)、病巣を切除後、人工

骨置換を行う。腎癌や甲状腺癌のように放射線治療に対する感受性が低く再骨化が期待できない場
合は特に良い適応である。骨折の形態や骨融解の範囲から骨接合では固定性が得られない場合では
予後が 1 年以内と予想されても適応になる。この方法は局所根治性にすぐれ、長期間固定性が維持
可能という長所があるが、インプラントが高価であり、骨接合に比べ感染や脱臼といった合併症が
多く

2)、またリハビリや入院期間が長いという短所もあるため、歩行が期待できない症例や短期予

後症例には避けるべきである。
一方予後が 1 年以内と想定される症例では、骨接合が第一選択である。現在では髓内釘が行われ
ることが多い。侵襲が少なく腰椎麻酔でも可能で、コストも安く合併症も少ないため、出血傾向や
高度の臓器障害がなければ、積極的に行うべきである。しかし手術だけでは骨破壊が進行し、再度
固定性が失われてしまうため手術後の放射線治療が必須である。放射線治療は骨折部だけではなく
インプラントの先端まで含めて行う。
3. 脊椎転移
脊椎転移に対しては麻痺がなければ放射線治療を行う。しかし麻痺がなくても病的骨折による脊
椎不安定性で疼痛が著しい場合は手術の適応がある。この場合は除圧を行わずとも固定のみで良好
な成績が得られるため手術の良い適応である。脊髄圧迫による不全麻痺がある場合には手術も考慮
に入れる必要がある。放射線治療のみと手術±放射線治療を比較した場合、神経学的所見の改善は手
術を行った群の方がすぐれていたことが報告されている

3)。しかし未治療前立腺癌や悪性リンパ腫

のように放射線治療に高感受性の腫瘍では照射と化学療法で麻痺回復が可能である

4)。手術は、後

方除圧後方固定が基本であるが、四肢に比べると侵襲が大きく、全ての症例で麻痺が回復するわけ
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