よむ、つかう、まなぶ。

MC plus(エムシープラス)は、診療報酬・介護報酬改定関連のニュース、

資料、研修などをパッケージした総合メディアです。


参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (205 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
低解像度画像をダウンロード

資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。

(6)高齢者がん検診の現状と課題

Q1
A1

高齢者へのがん検診にメリットはあるのか?
研究が十分なされていないため、後期高齢者に対して、がん検診が有効であるというエ
ビデンスはない。また有効でないというエビデンスもない。

【 解説 】
がん検診は、健常者に対して定期的な検査を行うことにより、がんの早期発見・早期治療を通じ
て、がん死亡を減らすために行うものである。対策型がん検診の提供者である自治体の立場からは、
対象者集団の当該がん死亡率減少が目的であると定義されており、わが国でのがん対策推進基本計
画の目標であった 75 歳未満のがん死亡率減少には、マッチするものであった。このことからがん検
診はわが国でのがん対策の柱の一つとして位置づけられてきた。
がん検診の死亡率減少は、がん患者を対象とした臨床試験とは異なり、がんに罹患するかどうか
もわからない健常者を対象としていることから数万人規模かつ 10-15 年の追跡期間という大規模ラ
ンダム化比較試験となるため、効果が最大となるよう期待され、かつ効率的に運営できる対象者に
限定して計画される。よって 75 歳以上の後期高齢者を対象に含めた評価研究が行われることはほと
んどない。たとえ 75~79 歳が対象に含まれていても層別化解析に耐えられない標本数となる場合
がほとんどであり、ましてや 80 歳以上を研究対象者に含めた研究はほとんどない。したがって、高
齢者に対しては、がん検診のメリットの中心であるがん死亡減少効果の証拠が直接示されていない
場合が多い。
諸外国では、がん検診導入時には、有効性が確認されたランダム化比較試験の年齢層よりも狭い
年齢範囲でがん検診の対象者が決められることが多く、後に年齢上限を延長することが可能かを症
例対照研究の成績や専門家の意見などで決定しているのに対して、我が国では、1982 年の胃がん検
診導入時から、対象年齢の上限を設定していない。
また、子宮頸がん検診は多くの国で 65 歳までを対象としている。それは、65 歳までの受診と、
それ以降の受診を比較して、後期高齢者での死亡率減少効果の変化をみた研究の結果、65 歳以上の
受診による追加的な効果がみられず、メリットがないという証拠に基づいている。
さて、がん検診によりがんの死亡率が減少するのは、いったい何年後からだろうか?現行のがん
検診の対象である胃・大腸・肺・子宮頚・乳がんでは検診の開始後3~7 年目から検診未受診群と受
診群のがん死亡率が乖離してくる。したがってがん死亡の減少という提供者側の観点からすれば生
命予後が 5 から 10 年程度見込まれるものでないとがん検診を実施する意義に乏しい。一方受診者
の立場からすれば、後々がんで苦しまないように手術以外の治療で済まされるのであれば検診を受
診したいという考え方もあり得る。たとえば胃粘膜がんへの内視鏡治療や肺の限局性のがんに対す
る放射線治療である。検診を受けていれば早期発見できた病変が、検診しないで放置していて転移
や浸潤による症状が発現するまでの期間(Sojourn time)は 2~3 年程度と見積もられている 1~4)。
当然、腫瘍がさらに進行してがん死に至るまでよりは短い。したがって検診のメリットを得るため
には、①少なくとも 3 年以上の健康的な生活を送ることが期待できる健康状態であること、②腫瘍
197