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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (127 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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12.

リンパ浮腫

リンパ浮腫は、リンパ管やリンパ節の先天的な発育不良またはがん治療等による損傷によって引
き起こされる浮腫で、リンパ管内に回収されなかった蛋白を高濃度に含んだ体液が間質に貯留した
状態である。リンパ浮腫は、先天性・原因不明の原発性(一次性)と発症原因が明らかな続発性(二
次性)に大別され、がん治療後に発症するリンパ浮腫は続発性リンパ浮腫に分類される。推奨され
ている治療の第一選択肢は「スキンケア、圧迫療法、圧迫下での運動、用手的リンパドレナージ、日
常生活指導」で構成される複合的治療である。この項では、高齢者のがん治療後リンパ浮腫の支持・
緩和治療にあたって留意すべき特記事項の有無について包括的にまとめた。

Q1

がんの治療によって誘発された上肢や下肢のリンパ浮腫に対して、高齢者には特別な留
意点があるか?

A1

高齢者に特別な留意点はない。ただし、圧迫圧や治療回数に考慮が必要な場合がある。

【 解説 】
続発性リンパ浮腫は、全リンパ浮腫患者の 80~90%を占める。乳がんや子宮がん・卵巣がんなど
婦人科系のがんの術後に発症することが多いため、患者の多くは女性という特徴がある。がんの好
発年齢は、乳がん 40~60 歳代、子宮頸がん 30~40 歳代、子宮体がん 50 歳代以降、卵巣がん 50~
60 歳代であること、およびがん患者の長期生存が可能となったことを併せて考えると、リンパ浮腫
患者に高齢女性が多いことは容易に推察される。
リンパ浮腫を発症すれば完治することは困難なため、患者は専門家による継続的な治療によって
悪化を防止するとともに、症状コントロールセルフケアに努めなければならない。リンパ浮腫治療
の第一選択肢は複合的治療(スキンケア、圧迫療法、圧迫下での運動療法、用手的リンパドレナー
ジ、日常生活指導)である。この治療は、障害のあるリンパ経路に起きたうっ滞を解消することによ
って、組織間隙に貯留する体液をリンパ管に回収することを目的とするものである 1)。
複合的治療を続けるリンパ浮腫患者は実臨床では以下の事に留意するよう指導される。リンパ浮
腫の皮膚はリンパの流れが停滞していることから易感染状態のため、虫刺されなどの微細な傷を作
らない事や皮膚の清潔と保湿に務めること、組織圧を上げ貯留したリンパ液をリンパ系に移動させ
るために患肢への弾性着衣や圧迫包帯を正しい方法で装着すること

2)、圧迫下で運動を行い、筋肉

ポンプ作用を最大限に発揮させること(負荷運動は上肢リンパ浮腫の増悪予防に有効 3))、リンパの
連絡路を使用したドレナージを行うことに加え、体重管理(肥満予防)4)5)、急性炎症性変化時(蜂
窩織炎等)の早急な医療機関受診、患肢での血圧測定や採血・注射を控えるといった制限された行
為の継続 6)等である。これら留意点についても、エビデンスが少ない。ゆえに、リンパ浮腫診療ガ
イドラインは 2009 年に第 1 版が出版され、2018 年には第 3 版と版を重ねているが、十分な科学根
拠がないとする推奨グレード、証拠不十分とするエビデンスグレード、報告例が希少の推奨度評価
なしが多く見受けられる現況である。年齢別に言及したエビデンスがないことから、高齢者に特化
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