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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (122 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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10.

粘膜障害

Q1

高齢者の抗がん薬もしくは分子標的薬誘発粘膜障害に対して、特別な配慮が必要か?

A1

粘膜障害の発症頻度・重症化のリスクが高い可能性がある。標準的な予防的口腔管理を
十全に行ない、密な口腔内アセスメントを継続することが推奨される。ただし、高齢者
だけの特別な配慮は不要。

【 解説 】
高齢者に対するがん薬物療法では、生理的な臓器機能の低下のため、重篤な毒性のリスクが一般
的な若年者より高くなる、という共通認識があり

1)2)、粘膜毒性も同様の傾向を示唆する報告があ

る 1)2)3)。
しかしいくつかの研究では、薬物療法に関連する粘膜毒性の頻度に年齢の影響は認められなかっ
たという相反する結論を提示しているものもあり、現時点では高いエビデンスレベルをもって年齢
と粘膜毒性の相関を示す報告はない。
・骨肉腫に対する術前化学療法において、若年者と高齢者の有害事象の頻度に関するメタアナリシ
スでは、年齢と重度粘膜炎の発生率に関連性はなかった 4)。
・造血幹細胞移植において、≥65 歳(N = 58)と 55-64 歳(N = 44)の 2 群間で、グレード 3〜4 の
重度粘膜炎の発生率に差はなかった 5)。
・EGFR 遺伝子変異を有する非小細胞肺癌で 75 歳以上の高齢患者患者を対象とした有害事象の調
査では、若年者と比較し下痢および口腔粘膜炎は高齢患者でより頻繁であったが、統計的有意性
には達しなかった 6)。
その上で高齢者の口腔内の特徴を鑑みると、以下に示すような加齢に伴う様々な変化により口
腔内の環境が悪化しており、局所的な粘膜炎のリスク因子が多いことが知られている 7)。
・口腔の乾燥
老化に伴う病態を介した二次的な唾液分泌能低下(特に向精神薬や利尿薬、カルシウム拮抗薬
や抗ヒスタミン薬などの副作用による薬剤性の口腔乾燥)などにより、臨床的に口腔乾燥を来し
ていることが多い。口腔乾燥は粘膜の脆弱化、局所感染リスクの増悪などの悪影響を及ぼす。
・口腔内の形態の変化
加齢変化として歯肉の退縮や歯槽骨の吸収がおこる上、歯周病の罹患率が高く、動揺歯や歯の
喪失による義歯の使用、補綴物が多い。これらは口腔粘膜への外的刺激となって粘膜炎の発症ト
リガーとなり得るだけでなく、口腔内の形態が複雑化し、セルフケアを困難にする。また高齢者
の口腔清掃は、口腔内環境の変化に伴い、若年者や成人と比較してその程度や頻度が低下する傾
向にあると報告されており、口腔内環境の悪化の一因となっている。
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