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資料1-2-14診断基準等のアップデート案(第49回指定難病検討委員会資料) (54 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25626.html
出典情報 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第49回 5/16)《厚生労働省》
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264 無β リポタンパク血症
○ 概要
1.概要
無β リポタンパク血症は著しい低コレステロール血症及び低トリグリセリド血症を来す、まれな常染色
体潜性遺伝(劣性遺伝)疾患である。アポ B 含有リポタンパク(β リポタンパク)であるカイロミクロン、VLDL、
LDL が欠如しており、患者血中にアポ B はアポ B-48、アポ B-100 ともに認めない。脂肪吸収障害とそれに
よる脂溶性ビタミン欠乏症が授乳開始時より持続するため、適切な治療を長期に継続しないと不可逆的な
眼症状、神経障害を来しうる。1993 年に本疾患において MTP ミクロソームトリグリセリド転送蛋白(MTTP)
の遺伝子異常が同定され、MTP 欠損症とも呼ばれる。
2.原因

MTPMTTP 遺伝子異常が病態形成に大きく関与する。MTP は肝・小腸で合成されたアポ B 蛋白にトリグ
リセリドが付加され VLDL 及びカイロミクロン粒子が形成される過程に不可欠である。肝での VLDL 産生に
より末梢組織に必要なコレステロールの輸送がなされ、小腸でのカイロミクロン形成により脂肪が吸収され
る。MTP の欠損により、トリグリセリドと結合しないアポ B は速やかに分解されて血中に分泌されない。
3.症状
脂肪吸収障害による栄養障害と、それに伴う脂溶性ビタミンの吸収障害(特にビタミン E やビタミン A など
の欠乏)に起因する合併症を認める。脂肪吸収の障害により、授乳開始とともに始まる脂肪便、慢性下痢、
嘔吐と発育障害を呈する。
また、脂溶性ビタミンの吸収障害により、思春期までに網膜色素変性などの眼症状、多彩な神経症状(脊
髄小脳変性による運動失調や痙性麻痺、末梢神経障害による知覚低下や腱反射消失など)を呈する。ほ
かに進行したケースでは、失明や自立歩行困難などにより、ADL が著しく低下する。ほかに脂肪肝や肝硬
変の報告、ビタミン K 欠乏による出血傾向や心筋症による不整脈死の報告もある。
4.治療法
根治療法はなく対症療法のみである。脂溶性ビタミンの経口大量補充療法を行うが、特にビタミン E が重
要である。100-300IU/kg/日(あるいは幼児には1日 1,000~2,000mg、/日、学童期以降の小児から成人に
は 5,000~10,000mg/日)の長期大量投与によって神経症状の発症及び進展を遅延させる可能性がある。
眼症状に対しては、ビタミン E 補充に加えてビタミン A(100-400IU/kg/日)を補充する。他にビタミンD
(800-1200IU/日)、ビタミン K(5-35mg/週)、ビタミン B12、鉄、葉酸などの補充が必要となる場合もある。消
化器症状に対しては脂肪制限、特に長鎖脂肪酸を制限する。(総カロリーに対して 30%以下、あるいは 1 日
15~20g 以内(小児では 5g/日以内から始める))。また必須脂肪酸の摂取を勧める(耐容内のティースプーン
1 杯以下の多価不飽和脂肪酸の豊富な油(大豆油やオリーブ油など)の摂取)。栄養障害に対してはカイロミ
クロンを経ずに吸収される中鎖脂肪(medium-chain triglyceride:MCT)を投与することもあるが、一般には
必要でないとされ、MCT による肝硬変の誘発の可能性も報告されていることから、注意が必要である(極度

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