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資料1-2-2診断基準等のアップデート案(第49回指定難病検討委員会資料) (13 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25626.html
出典情報 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第49回 5/16)《厚生労働省》
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16 クロウ・深瀬症候群
○ 概要
1.概要
これまでクロウ・深瀬(Crow‐Fukase)症候群、POEMS(Polyneuropathy, Organomegaly, Endocrinopathy,
M-Protein, and Skin Changes Syndrome)症候群、高月病、PEP 症候群などの名称で呼ばれているが、これ
らは全て同一の疾患である。現在、本邦においては、クロウ・深瀬症候群、欧米では POEMS 症候群と呼ば
れることが多い。POEMS とは、多発性神経炎、臓器腫大、内分泌異常、M 蛋白、皮膚症状の頭文字を表し
ている。1997 年に、本症候群患者血清中の血管内皮増殖因子(VEGF)が異常高値となっていることが報告
されて以来、VEGF が多彩な症状を惹起していることが推定されている。すなわち、本症候群は、形質細胞
単クローン性増殖が基礎に存在し、多発ニューロパチーを必須として、多彩な症状を併存する症候群と定
義し得る。
疫学としては、深瀬らの報告以来、我が国において多くの報告がある。発症に地域特異性はなく、全国に
広く分布している。また、発症は 20 歳代から 80 歳代と広く分布している。平均発症年齢は男女ともに 48 歳
であり、多発性骨髄腫に比較して約 10 歳若い。2004 年の厚生労働省難治性疾患克服研究事業「免疫性
神経疾患に関する調査研究班」による全国調査では、国内に約 340 名の患者がいることが推定された。欧
米からの報告は少なく、日本においてより頻度の高い疾患であるとされている。
疫学としては、平成 27 年(2015 年)に本邦で実施された全国調査が最新である。患者数は 392 名(有病
率 10 万分の 0.3)と推定される。発症年齢の中央値は 54 歳、男女比は 1.5:1 である。
2.原因
本症候群の多彩な病像の根底にあるのが形質細胞の増殖であり、恐らく形質細胞から分泌される VEGF
が多彩な臨床症状を惹起していることが実証されつつある。VEGF は強力な血管透過性亢進および血管新
生作用を有するため、浮腫、胸・腹水、皮膚血管腫、臓器腫大などの臨床症状を説明しやすい。しかし、全
例に認められる末梢神経障害(多発ニューロパチー)の発症機序については必ずしも明らかではない。血
管透過性亢進により血液神経関門が破綻し、通常神経組織が接することのない血清蛋白が神経実質に移
行することや神経血管内皮の変化を介して循環障害がおこるなどの仮説があるが、実証には至っていない。
3.症状
約半数の患者は、末梢神経障害による手や足先のしびれ感や脱力で発症し、この症状が進行するにつ
れて、皮膚の色素沈着や手足の浮腫が出現する。残りの半数では、胸水・腹水や浮腫、皮膚症状、男性で
は女性化乳房から発症する。これらの症状は未治療では徐々に進行して行き、次第に様々な症状が加わ
ってくる。診断は末梢神経障害や骨病変の精査、血液検査によるM蛋白の検出や血管内皮増殖因子の高
値などに基づいてなされる。
4.治療法
標準的治療法は確立されていない。現状では、以下のような治療が行われており、新規治療も試みられ
ている。少なくとも形質細胞腫が存在する症例では、病変を切除するか、あるいは化学療法にて形質細胞
の増殖を阻止すると症状の改善を見ること、血清 VEGF 値も減少することから、形質細胞腫とそれに伴う高
VEGF 血症が治療のターゲットとなる。
骨髄腫の治療が応用されるようになり、予後が格段に向上している。治療により VEGF 値が減少し、減少
の程度と改善の程度が相関することが示されている。そのため、VEGF は診断時だけでなく、治療効果判定

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