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費-1参考2 (32 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59554.html
出典情報 中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会(第70回 7/16)《厚生労働省》
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よって心血管疾患や脳卒中が減少すると、期待余命が延長して、非

狭義の不確実性は、大きく( a)モデルの不確実性と( b)パラメー

関連医療費(例えば認知症や糖尿病、腎透析など)が増大する可能性

タの不確実性に分けることができる。前者のモデルの不確実性は、

がある。このような非関連医療費は原則として費用に含めないこ

さらに( a)-1 方法論上の不確実性や( a)-2モデルの構造・仮定等に

ととしている。

起因するものがある。
( a)-1 方法論上の不確実性は、割引率や生産性損失の推計方法、

QOL 値の測定方法等が理論的には一意に定められないために生じ
る。これらを避けるためには、標準的な共通の手法に従って分析を

ビニエット法

行うことが重要であるが、割引率など結果に大きな影響を与える場
合には、一次元感度分析によってその不確実性の大きさを評価する。

仮想的な健康状態の記述(ビニエット, vignette)を回答者に読ま

( a)-2モデルの構造・仮定に起因する不確実性は、健康状態や治

せて、その健康状態を想起させることにより、QOL 値の評価を行う

療プロセスのモデル化法、モデルに組み込むパラメータの選択、観

方法。評価にはいわゆる直説法とも呼ばれる SG 法、TTO 法、DCE

察期間を超えて長期的な予後を予測するための仮定等によって生

法などが用いられる。記述された健康状態は患者から直接得られた

じる。感度分析等によって評価する。

ものではない一方で、得られる QOL 値に大きな影響を与えること

( b)パラメータの不確実性は、パラメータの推定値が持つ不確実

から、恣意的なシナリオとならないよう慎重な配慮が必要である。

性によって生じる。例えば、ある臨床試験の中で 100 人中 10 人に
イベントが起こったとしても、真のイベント発生率(母イベント発
生率)は 10/100 = 0.1 ではないかもしれない。このような統計的
推測に起因する不確実性に対処するには、通常の感度分析に加えて

費用効果分析

PSA を行うことも有用である。

医療技術の経済評価は下記の 4パターンに分類されることが多
い。( a)アウトカムを同等とおいて費用のみを検討する「費用最小
化分析( Cost-minimization analysis:CMA)」、
( b)QALY 以外の
種々のアウトカム指標(生存年、イベント回避など)を用いる「費用

マッピング

効果分析( Cost-effectiveness analysis:CEA)」、
( c)QALY を用

選好にもとづく尺度による測定値が存在しない場合、患者報告ア

いる「費用効用分析( Cost-utility analysis:CUA)」、
( d)アウトカ

ウトカム( PRO)での測定結果から、費用効果分析で使用する QOL

ムを金銭化して評価する「費用便益分析( Cost-benefit analysis:

値を算出することが有用な場面もある。このような尺度間のスコ

CBA)」。

ア変換をマッピング( mapping)と呼ぶ。他のデータが存在しない

しかし、CMA、CEA、CUA は費用とアウトカムを別々に推計する
という点では、同種の分析であるとも考えられるので、本ガイドラ

ときなどにマッピングは次善の手法として許容されうるものの、統
計学的な妥当性などを十分に検討した上で実施すべきである。

インではこれらの手法をまとめて費用効果分析と呼んでいる。

不確実性
費用効果分析を行う上では、様々な分析の不確実性(uncertainty)
がともなう。

メタアナリシス
システマティックレビューで得られた結果を統計的手法によっ
て統合し、統合した値やその信頼区間を求める手法である。異質性
が小さい場合は、固定効果モデル、異質性が大きい場合は変量効果

異質性( heterogeneity)は、広義の不確実性の一種であり、比較

モデルやベイズモデルを用いるのが一般的である。結果はフォレ

対照技術や診療パターン、対象患者等が一意に定まらない状況を指

ストプロットを用いて表記する場合が多い。治療間の対比較では

す。これは、次に説明する狭義の不確実性とは異なり、統計学や医

なく、複数の治療の比較を同時に行う場合は、ネットワークメタア

療経済学上の技術的な問題ではなく、現実が多様であることに起因

ナリシスと呼ばれる手法が用いられる(→間接比較)。

する。このような異質性が存在する場合は、複数のシナリオ設定に
基づいた感度分析を行うことを推奨している。

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国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター(C2H)