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【別添】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(第1版) (32 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00332.html
出典情報 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(第1版)」の周知について(4/28付 事務連絡)《厚生労働省》
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●新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き

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別冊

罹患後症状のマネジメント・第1版 ●8 “ 痛み ” へのアプローチ

“ 痛み ” へのアプローチ

1.はじめに
COVID-19 罹患後にさまざまな部位に痛みが生じたり,少なからず持続したりすることが報
告されている.痛みの部位は頭痛,喉の痛み,頸部痛,胸背部痛,腹部痛,腰痛,関節痛など
多岐にわたる.これらが引き起こされる要因には,ウイルスによる身体ダメージや集中治療後
症候群,床上安静などを含めた治療プロセスによる影響などが考えられ,時間経過とともに改
善する傾向がみられる.しかし,痛みが持続すると廃用なども影響し,心身に不調をきたして
慢性化する可能性もあるため,適切な対応が必要とされる.診療に当たるかかりつけ医等は器
質的疾患の診断・加療を行い,短期(1カ月程度)の一般的な疼痛治療や生活指導を行っても
症状が改善しない場合や症状増悪がみられる際には,治療関係を維持しつつ,専門医療機関と
連携しながら診療を行うことが望ましい.

2.科学的知見
これまでの多くの研究において,COVID-19 罹患後に診られる痛みの頻度は,頭痛(1.7 ~
33.9 %)
,喉の痛み(0.7 ~ 47.1%)
,胸部痛(1.6 ~ 17.7 %)
,腹部痛(1.9 ~ 14.5 %)に加
えて運動器の痛みである筋痛・関節痛(1.5 ~ 61%)であり,これらには頸部痛,背部痛,腰
痛なども含まれる.これらの痛みの多くは一般的に慢性の痛みを呈する患者において多くみら
れる症状ではあるが,頭痛,喉の痛み,運動器の痛みのほうが胸部痛や腹部痛よりは多い傾向
がある.また,筋痛,関節痛については広範にみられるケースのほうが多い.
今後,痛みの遷延を引き起こさないための方策として現在まで考えられている疼痛発生機序
をあげる(図 8-1 参照)
.すでに分子メカニズム的なレベルも含めた研究が進められてきてお
り,SARS-CoV-2 による神経・筋などの細胞傷害が引き起こされることが解明されてきている.
しかし,その機序がそのまま罹患後症状の要因になっているかについては明確ではない.
図 8-1 SARS-CoV-2 感染による疼痛発症機序と考えられているメカニズム
① SARS-CoV-2 による神経・筋組織への直接障害
神経細胞や筋細胞の表面の ACE2 を介して SARS-CoV-2 が細胞内へ侵入し直接的に障害を受ける
② SARS-CoV-2 の心筋および胸膜細胞への感染による機序
特に胸痛の原因としてこの機序が推測されている
③炎症性サイトカインによる障害
SARS-CoV2 がマクロファージなどの表面の Toll-like receptor:TLR(主に TLR3/4)に結合するこ
とでサイトカイン(IL1 β,TNF α,IL-6 など)が放出され,それらにより脊髄後根神経節や中枢神
経組織や筋組織が障害を受ける
④ ACE2/ レニン - アンギオテンシン系(RAS)との関連による機序
SARS-CoV-2 感染時,ウイルスは ACE2 と結合して細胞内にとりこまれ,結果的に ACE2 の代謝経
路の減少とともに炎症による痛みへの拮抗作用減少につながり,症状が顕性化する
⑤廃用や心身医学的要因に伴う痛み
重症感染症では ICU 後症候群なども含めて筋力低下や疲労感・倦怠感が出現するが,加えて心身医学
的な要因も相まって症状の遷延化が起こる

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