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【別添】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(第1版) (28 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00332.html
出典情報 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(第1版)」の周知について(4/28付 事務連絡)《厚生労働省》
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●新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き

別冊

罹患後症状のマネジメント・第1版 ● 7 精神症状へのアプローチ

さらに 65 歳以上の認知症は 1.6%(95%CI 1.2 ~ 2.1)と推計された.
さらに逆の関連性について,過去 1 ~ 3 年間に精神疾患の診断歴のある集団では,診断歴の
ない集団に比べ,COVID-19 罹患リスク(リスク比)が 1.65 倍(95%CI 1.59 ~ 1.71)と示され,
社会経済要因による残余交絡を無視はできないまでも,精神疾患の既往と COVID-19 罹患リ
スク増大の関連を示すエビデンスとして注目に値する.本研究より,COVID-19 罹患後の少な
くとも数カ月間は,不安障害,睡眠障害を中心とする精神障害,および 65 歳以上の認知症の
新規発症リスクが高まることが示唆された.一方,COVID-19 罹患と統合失調症や気分障害と
いった精神病圏の疾患との明確な関連性は示されなかった.
次いで,2020 年 1 月 20 日~ 12 月 13 日までを観察期間とする,62 社の保険者からなる
約 24 万人規模のコホート研究では,COVID-19 罹患後 14 ~ 180 日間における精神疾患の有
病割合を推計し,不安障害は 7.11%(95%CI 6.81 ~ 7.41)
,気分障害は 4.22%(95%CI 3.99
~ 4.47),睡眠障害は 2.53%(95%CI 2.37 ~ 2.71)
,物質使用障害・依存症は 1.92%(95%CI
1.77 ~ 2.07)

認知症は 0.67%(95%CI 0.59 ~ 0.75)

上記いずれかの精神・神経疾患
(I60-62,
I63, G20-21, G61, G50-59, G70-73, ,G04, G05, A86, A85.8, F01-03, G30, G31.0,
G31.83, F20-48, F10-19, F51.0, G47.0)は 12.84%(95%CI 12.36 ~ 13.33)と示され
た.当該研究の主目的は COVID-19 の重症度を「入院あり,集中治療あり,脳炎あり」の3
つのカテゴリごとに,精神症状のリスク評価を行うことであり,認知症と統合失調症を除いて,
COVID-19 の重症度が高いほど精神症状出現のリスクが高まる傾向が示された.

3.症状へのアプローチ
図 7-1 に,現時点で想定される精神・神経系症状に対するアプローチの包括的な流れを示す.

4.フォローアップすべき所見・症状
入院もしくは集中治療を要する中等症~重症の COVID-19 罹患後は,PTSD を含む不安障
害をはじめ,睡眠障害,気分障害,物質使用障害・依存症などに注意が必要である.また高齢
者においては重症度にかかわらず,認知症の発症予防を念頭においたフォローアップが望ましい.

5.プライマリケアにおけるマネジメント
罹患後にみられる抑うつや不安といった症状は,時間経過とともに徐々に改善し,情緒の不
安定感や不規則な生活リズムなども元の状態にまで回復する場合が多いと考えられる.また,
COVID-19 罹患により,患者を取り巻く環境が大きく変化して経済不安などが生じていること
も想定される.患者本人だけでなく,家族や周囲との関係や社会経済状況なども踏まえ,患者
の心理を十分に理解することが重要である.情緒的になりがちな患者の不安をやわらげ,落ち
着いた気分で安心して話せる環境を整えるなどの工夫も必要となる.
身体症状を訴えるものの明らかな異常所見がなく,心理的要因が大きい場合,医療者からの
問いかけによって初めて患者自身の抱える悩みに気づき,さらに解決の糸口が見えてくること
もあるため,信頼関係と安心して話せる環境を担保することは重要である.プライマリケアに
おいては,精神疾患に関する詳細な鑑別よりも不安の軽減と,患者に寄り添ったケアや情報が
求められる.
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