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【資料3-1】ゲノム編集技術等を用いたヒト受精胚等の取扱い等に関する合同会議「議論の整理」 (5 ページ)
出典
| 公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67012.html |
| 出典情報 | 厚生科学審議会 科学技術部会(第146回 12/11)《厚生労働省》 |
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Ⅱ.
各論点
細胞内の核酸をターゲットとして塩基配列の変異や遺伝子発現を制御するよ
うな遺伝子改変技術は、体細胞を対象とする遺伝子治療として従来から臨床応
用されており、遺伝子導入や遺伝子組換え技術と呼ばれている。目的とする遺伝
子はウイルスベクターやプラスミドにより細胞内に導入され、染色体や染色体
外で遺伝子発現されるが、特に染色体へ組み込まれる能力をもつベクターでは、
塩基配列内への取り込みがランダムであることから、発がん遺伝子近傍へ取り
込まれることによる悪性腫瘍発生の可能性等が重大な有害事象として挙げられ
るなど、望ましくない遺伝子変異や遺伝子発現も起こり得る。2018 年のデータ
では各国で行われている体細胞を対象とする遺伝子治療臨床試験 2,918 プロト
コールのうち、悪性腫瘍の発生が3プロトコールで報告されており4、体細胞を
対象とする遺伝子治療に関する遺伝子組換え技術の科学的な課題とされている。
一方で 1996 年頃から開発が進められている、ゲノム編集技術は、CRISPR/Cas9
を代表とするタンパク質等を特定の塩基配列を標的として結合させ、二本鎖 DNA
を切断し、遺伝子の導入や欠失等を起こすことができる遺伝子改変技術の一つ
である。ゲノム編集技術の中には、特定の塩基配列への結合を行うが、DNA の切
断や塩基配列の改変を行わず、遺伝子発現を制御(増強又は抑制)するシステム
(エピジェネティクス)に影響を及ぼすような技術も存在する。また、ゲノム編集
技術は、細胞の核内に存在する DNA のみならず、遺伝子発現の過程で転写され
生じる mRNA やミトコンドリアに存在する DNA に対しても適用される技術であ
る。
ゲノム編集技術は従来の遺伝子組換え技術と比べ、特定の塩基配列を標的と
して結合することから、望ましくない遺伝子変異や遺伝子発現のリスクを下げ
ることができる技術として期待されており、体細胞を対象としたヘモグロビン
異常症、血友病、AIDS 等の感染症、癌、自己免疫疾患等の治療に関する多くの
臨床試験が諸外国において既に実施されている。2023 年から 2024 年にかけて
は、鎌状赤血球症や輸血依存性βサラセミアの治療として、CRISPR/Cas9 を用い
てゲノム編集を行う医薬品(Casgevy)が英米で相次いで初めて承認された5。ま
た、in vivo でのゲノム編集技術による疾患治療のための臨床試験も行われてい
4
The Journal of Gene Medicine; 2018 John Wiley and Sons Ltd(第3回ゲノム編集技
術等を用いたヒト受精胚等の臨床利用のあり方に関する専門委員会 資料3より引用)
5
Adashi EY, et al. CRISPR Therapy of Sickle Cell Disease: The Dawning of the
Gene Editing Era. Am J Med. 2024 May;137(5):390-392.
5
各論点
細胞内の核酸をターゲットとして塩基配列の変異や遺伝子発現を制御するよ
うな遺伝子改変技術は、体細胞を対象とする遺伝子治療として従来から臨床応
用されており、遺伝子導入や遺伝子組換え技術と呼ばれている。目的とする遺伝
子はウイルスベクターやプラスミドにより細胞内に導入され、染色体や染色体
外で遺伝子発現されるが、特に染色体へ組み込まれる能力をもつベクターでは、
塩基配列内への取り込みがランダムであることから、発がん遺伝子近傍へ取り
込まれることによる悪性腫瘍発生の可能性等が重大な有害事象として挙げられ
るなど、望ましくない遺伝子変異や遺伝子発現も起こり得る。2018 年のデータ
では各国で行われている体細胞を対象とする遺伝子治療臨床試験 2,918 プロト
コールのうち、悪性腫瘍の発生が3プロトコールで報告されており4、体細胞を
対象とする遺伝子治療に関する遺伝子組換え技術の科学的な課題とされている。
一方で 1996 年頃から開発が進められている、ゲノム編集技術は、CRISPR/Cas9
を代表とするタンパク質等を特定の塩基配列を標的として結合させ、二本鎖 DNA
を切断し、遺伝子の導入や欠失等を起こすことができる遺伝子改変技術の一つ
である。ゲノム編集技術の中には、特定の塩基配列への結合を行うが、DNA の切
断や塩基配列の改変を行わず、遺伝子発現を制御(増強又は抑制)するシステム
(エピジェネティクス)に影響を及ぼすような技術も存在する。また、ゲノム編集
技術は、細胞の核内に存在する DNA のみならず、遺伝子発現の過程で転写され
生じる mRNA やミトコンドリアに存在する DNA に対しても適用される技術であ
る。
ゲノム編集技術は従来の遺伝子組換え技術と比べ、特定の塩基配列を標的と
して結合することから、望ましくない遺伝子変異や遺伝子発現のリスクを下げ
ることができる技術として期待されており、体細胞を対象としたヘモグロビン
異常症、血友病、AIDS 等の感染症、癌、自己免疫疾患等の治療に関する多くの
臨床試験が諸外国において既に実施されている。2023 年から 2024 年にかけて
は、鎌状赤血球症や輸血依存性βサラセミアの治療として、CRISPR/Cas9 を用い
てゲノム編集を行う医薬品(Casgevy)が英米で相次いで初めて承認された5。ま
た、in vivo でのゲノム編集技術による疾患治療のための臨床試験も行われてい
4
The Journal of Gene Medicine; 2018 John Wiley and Sons Ltd(第3回ゲノム編集技
術等を用いたヒト受精胚等の臨床利用のあり方に関する専門委員会 資料3より引用)
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Adashi EY, et al. CRISPR Therapy of Sickle Cell Disease: The Dawning of the
Gene Editing Era. Am J Med. 2024 May;137(5):390-392.
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