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薬剤耐性菌問題に関する調査報告書 (16 ページ)

公開元URL https://www.jpma.or.jp/information/international/stop_amr/initiative/tv28hf0000002ykb-att/2506_amr.pdf
出典情報 薬剤耐性菌問題に関する調査報告書(7/29)《日本製薬工業協会》
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日本におけるプル型インセンティブ導入の投資対効果
プル型インセンティブの導入により新規抗菌薬の市場投入が加速されることは、AMRによる経済損失
を回避することにつながり、投資対効果の面から見ても有効と考えられています。
Center for Global Development (CGD)レポート27では、優先的に対応すべきとされている6つの薬
剤耐性菌を治療するために、30年間で合計18の新規抗菌薬を開発することを目指す新しいインセンティ
ブ制度の、日本への便益を推定しています。ここでは、世界各国が協調してフェアシェアの考え方に基づ
き費用分担することなどいくつかの条件のもと、期間を10年と30年とに分けて費用・便益比率をROI
(Return on Investment)として算定・分析した結果、10年間では便益が費用を6倍上回り、さらに30年
間では28倍となっており、いずれの期間設定についても高い社会的ROIをもたらすことが示されていま
す。特に、10年に比べて30年のROIは非常に高く、インセンティブプログラムの導入による便益は累積的
であり、持続可能な施策が実施されることで数十年後に多くの便益が発生することが見込まれています。
なお、国際製薬団体連合会(IFPMA)が2024年に公表したレポートによれば、効果的なプル型インセ
ンティブが導入されているシナリオでは、導入されていないシナリオよりも、2033年時点までにグローバル
で研究開発される新規抗菌薬の種類が約2.7倍多いという推計結果が提示されており28、上述のような便
益の創出は、単なるシミュレーション結果ではなく一定の実現可能性があるものと考えられます。

日本の現状に最適なプル型インセンティブ
現在、日本で既に導入されているプル型インセンティブとしては、抗菌薬確保支援事業がありますが、
上述のとおり、この事業はあくまで薬剤耐性対策となる適正使用の推進(販売量の適正水準維持)に対す
る減収分を補填するものであり、研究開発促進の効果は期待しにくいと考えられます。また、このような収
入保証制度が既に存在する中で、SMのような新規抗菌薬の適時供給体制を整え、市場に提供すること
に対する定額料金支払は、インセンティブ機能が重複する部分もあります。売上とは連動させず、投資に
対する適切な利益が保証されるMERを導入することで、日本における抗菌薬の開発魅力度は劇的に高
まり、既存抗菌薬の効能・剤型追加の促進、アカデミアやスタートアップによる画期的な新薬の開発、ま
た、ドラッグラグやドラッグロスの解消、製薬企業の本領域への再参入にもつながっていくことが期待され
ます。

Estimating Japan’s Return on Investment from an Ambitious Program to Incentivize New
Antibiotics. CGD BRIEF. 2022 Dec.
https://www.cgdev.org/sites/default/files/estimating-eus-return-investment-ambitious-programincentivize-new-antibiotics.pdf
28 IFPMA, From resistance to resilience: What could the future antibioticpipeline look like?
27

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