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薬剤耐性菌問題に関する調査報告書 (11 ページ)
出典
公開元URL | https://www.jpma.or.jp/information/international/stop_amr/initiative/tv28hf0000002ykb-att/2506_amr.pdf |
出典情報 | 薬剤耐性菌問題に関する調査報告書(7/29)《日本製薬工業協会》 |
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市場の構造的課題に効果的なプル型インセンティブ
上述した通り、抗菌薬市場は適正使用の促進に伴う規模の縮小や、細菌感染症の感染拡大の時期及
び規模の予測が困難であるために、収益の不確実性が高いという特性があります。
収益予見性を高めるための「収益保証」に関するプル型インセンティブは「将来の収益の見込みを活用
し、研究開発への先行投資を間接的に提供することで、イノベーションを市場に『引き寄せる』」手法です。
また、承認取得後に報酬を得ることができる構造上、製薬企業のイノベーションが最終的に成功するまで
の動機付けを与えることができ、資金提供者は、イノベーションが社会的に価値のあるものであるかどう
かを、最後までより公平に判断できる制度ともいえます。さらに、製薬企業にとっては、上市後に必要とな
る安定供給や動向調査等を行うための財政的支援となり、経営・財務の健全性を保つ助けとなります。新
規抗菌薬の開発を充実させ、多くの化合物でパイプラインを埋めるためには、適切な規模の「収益保証」
に関するプル型インセンティブを導入する必要性が、経験的にも理論的にも示唆されています18。
プル型インセンティブの種類について
「収益保証型」のプル型インセンティブとしては、製造販売承認取得報償付与指定制度(MER)、定期
定額購買制度(SM)、収入保証制度が主として挙げられます19。
図表 7 プル型インセンティブの種類
種類
概要
製造販売承認取得
優先度の高い病原菌に対する抗菌薬の製造販売企業に対して、研究開発を
報償付与指定制度
経て最終的に製造販売承認を取得した時点で、政府等の公的機関が、当該抗
(MER:Market
菌薬の製造販売企業に対して適切な報償(補償)を支払う制度。
Entry Reward)
当該抗菌薬の使用量に応じた売上げとは別に、投資に対する適切な利益が保
証されるような報償(補償)が支払われる。
定期定額購買制度
政府等の公的機関が、優先度の高い病原菌に対する抗菌薬の製造販売企業
(SM:Subscription
に対して、当該抗菌薬による使用量に依存しない定額料金を定期的に支払う
Model)
制度。
当該企業は、定額料金を受け取る代わりに、一定の供給量(上限あり)を適時
に供給できる体制を整える。
利益保証制度
政府等の公的機関が、優先度の高い病原菌に対する抗菌薬の製造販売企業
に対して、抗菌薬以外の他の医薬品と同程度の年間利益を保証する制度。
Towse et al. An Ambitious USG Advanced Commitment for Subscription-Based Purchasing of Novel
Antimicrobials and Its Expected Return on Investment. 2022 Nov.
19 感染症による健康危機対応としての AMR 対策 抗菌薬市場におけるプル型インセンティブ制度の導入に関す
る政府向け提言書-持続可能な抗菌薬開発のエコシステム構築により国民の命を守る-,日経・FT 感染症会議,ア
ジア・アフリカ医療イノベーションコンソーシアム(AMIC) AMR 部会,p28,p29
https://www.amralliancejapan.org/wp/wpcontent/uploads/2021/03/RecommendationsOnPullIncentivesForAMRInJapanExecutiveSummary_JPN.
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上述した通り、抗菌薬市場は適正使用の促進に伴う規模の縮小や、細菌感染症の感染拡大の時期及
び規模の予測が困難であるために、収益の不確実性が高いという特性があります。
収益予見性を高めるための「収益保証」に関するプル型インセンティブは「将来の収益の見込みを活用
し、研究開発への先行投資を間接的に提供することで、イノベーションを市場に『引き寄せる』」手法です。
また、承認取得後に報酬を得ることができる構造上、製薬企業のイノベーションが最終的に成功するまで
の動機付けを与えることができ、資金提供者は、イノベーションが社会的に価値のあるものであるかどう
かを、最後までより公平に判断できる制度ともいえます。さらに、製薬企業にとっては、上市後に必要とな
る安定供給や動向調査等を行うための財政的支援となり、経営・財務の健全性を保つ助けとなります。新
規抗菌薬の開発を充実させ、多くの化合物でパイプラインを埋めるためには、適切な規模の「収益保証」
に関するプル型インセンティブを導入する必要性が、経験的にも理論的にも示唆されています18。
プル型インセンティブの種類について
「収益保証型」のプル型インセンティブとしては、製造販売承認取得報償付与指定制度(MER)、定期
定額購買制度(SM)、収入保証制度が主として挙げられます19。
図表 7 プル型インセンティブの種類
種類
概要
製造販売承認取得
優先度の高い病原菌に対する抗菌薬の製造販売企業に対して、研究開発を
報償付与指定制度
経て最終的に製造販売承認を取得した時点で、政府等の公的機関が、当該抗
(MER:Market
菌薬の製造販売企業に対して適切な報償(補償)を支払う制度。
Entry Reward)
当該抗菌薬の使用量に応じた売上げとは別に、投資に対する適切な利益が保
証されるような報償(補償)が支払われる。
定期定額購買制度
政府等の公的機関が、優先度の高い病原菌に対する抗菌薬の製造販売企業
(SM:Subscription
に対して、当該抗菌薬による使用量に依存しない定額料金を定期的に支払う
Model)
制度。
当該企業は、定額料金を受け取る代わりに、一定の供給量(上限あり)を適時
に供給できる体制を整える。
利益保証制度
政府等の公的機関が、優先度の高い病原菌に対する抗菌薬の製造販売企業
に対して、抗菌薬以外の他の医薬品と同程度の年間利益を保証する制度。
Towse et al. An Ambitious USG Advanced Commitment for Subscription-Based Purchasing of Novel
Antimicrobials and Its Expected Return on Investment. 2022 Nov.
19 感染症による健康危機対応としての AMR 対策 抗菌薬市場におけるプル型インセンティブ制度の導入に関す
る政府向け提言書-持続可能な抗菌薬開発のエコシステム構築により国民の命を守る-,日経・FT 感染症会議,ア
ジア・アフリカ医療イノベーションコンソーシアム(AMIC) AMR 部会,p28,p29
https://www.amralliancejapan.org/wp/wpcontent/uploads/2021/03/RecommendationsOnPullIncentivesForAMRInJapanExecutiveSummary_JPN.
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