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薬剤耐性菌問題に関する調査報告書 (14 ページ)
出典
公開元URL | https://www.jpma.or.jp/information/international/stop_amr/initiative/tv28hf0000002ykb-att/2506_amr.pdf |
出典情報 | 薬剤耐性菌問題に関する調査報告書(7/29)《日本製薬工業協会》 |
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第2章 提言
1.
日本におけるプル型インセンティブ導入
日本におけるプル型インセンティブとして必要な金額
① プル型インセンティブ導入として必要な金額の考え方
プル型インセンティブとしてその適正な金額は、新規抗菌薬の承認取得に成功した企業に対して、どの
程度の金額のプル型インセンティブを与えれば、投資に見合った収益の確保が可能であり、魅力的な抗
菌薬市場の再形成が可能か、という観点で算出することができます。これまでにも、プル型インセンティブ
の導入検討を行った各国政府やWHO及び研究者が、この観点で試算を行ってきています24。
本稿では、各国政府やWHOの研究内容及び世界各国の研究やレポートの結果から、計算に用いる各
種指標を適正化したうえで新規抗菌薬の開発に必要なプル型インセンティブの金額を算出している、
Outterson (2021) の論文24における考え方に基づいて、必要金額を整理します。
② 新規抗菌薬開発の活性化に必要なプル型インセンティブの金額
抗菌薬を含む医薬品開発は、一般に、時間と費用を要し、成功する確率が低いという特徴があります。
医薬品のシーズを探す探索研究から、動物実験などにより有効性・安全性を評価する前臨床試験、少数
の健康な成人を対象に有効性等を確認するPhase 1、少数の患者を対象に安全性や用法・用量を検討す
るPhase 2、患者を対象に有効性を確認するPhase 3といった各開発段階をすべてクリアして上市に至る
確率は、約3%とされています24。上述のOutterson (2021) の論文では、先行研究から、研究開発の成
功確率が低いことを織り込んだうえで投資に対して期待される収益としてのeNPV(Expected Net
Present Value:期待正味現在価値)の考えに基づいて、必要なプル型インセンティブの金額を算出して
います(考え方の詳細については、「Appendix 1」をご参照ください)。新規抗菌薬のeNPVはそのままで
は圧倒的なマイナスになってしまいますが、これをプラスに転じさせるためにはどの程度の金額規模のプ
ル型インセンティブが必要か、という考えです(図表8参照)。同論文では、前臨床からすべて自社でグロー
バル開発をした場合に必要なインセンティブは、MERで22億ドル、SMで44億ドルと試算されています。
Outterson K. Estimating The Appropriate Size Of Global Pull Incentives For Antibacterial Medicines.
Health Aff (Millwood). 2021 Nov;40(11):1758-1765.
24
11
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日本におけるプル型インセンティブ導入
日本におけるプル型インセンティブとして必要な金額
① プル型インセンティブ導入として必要な金額の考え方
プル型インセンティブとしてその適正な金額は、新規抗菌薬の承認取得に成功した企業に対して、どの
程度の金額のプル型インセンティブを与えれば、投資に見合った収益の確保が可能であり、魅力的な抗
菌薬市場の再形成が可能か、という観点で算出することができます。これまでにも、プル型インセンティブ
の導入検討を行った各国政府やWHO及び研究者が、この観点で試算を行ってきています24。
本稿では、各国政府やWHOの研究内容及び世界各国の研究やレポートの結果から、計算に用いる各
種指標を適正化したうえで新規抗菌薬の開発に必要なプル型インセンティブの金額を算出している、
Outterson (2021) の論文24における考え方に基づいて、必要金額を整理します。
② 新規抗菌薬開発の活性化に必要なプル型インセンティブの金額
抗菌薬を含む医薬品開発は、一般に、時間と費用を要し、成功する確率が低いという特徴があります。
医薬品のシーズを探す探索研究から、動物実験などにより有効性・安全性を評価する前臨床試験、少数
の健康な成人を対象に有効性等を確認するPhase 1、少数の患者を対象に安全性や用法・用量を検討す
るPhase 2、患者を対象に有効性を確認するPhase 3といった各開発段階をすべてクリアして上市に至る
確率は、約3%とされています24。上述のOutterson (2021) の論文では、先行研究から、研究開発の成
功確率が低いことを織り込んだうえで投資に対して期待される収益としてのeNPV(Expected Net
Present Value:期待正味現在価値)の考えに基づいて、必要なプル型インセンティブの金額を算出して
います(考え方の詳細については、「Appendix 1」をご参照ください)。新規抗菌薬のeNPVはそのままで
は圧倒的なマイナスになってしまいますが、これをプラスに転じさせるためにはどの程度の金額規模のプ
ル型インセンティブが必要か、という考えです(図表8参照)。同論文では、前臨床からすべて自社でグロー
バル開発をした場合に必要なインセンティブは、MERで22億ドル、SMで44億ドルと試算されています。
Outterson K. Estimating The Appropriate Size Of Global Pull Incentives For Antibacterial Medicines.
Health Aff (Millwood). 2021 Nov;40(11):1758-1765.
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