小児診療の現場におけるマイナ保険証の問題点
１．マイナ保険証利用時は３種類必要
マイナ保険証利用による小児科受診は、以下３種類が必要になります（東京都）。
①小児本人のマイナ保険証
②「資格情報のお知らせ」
③子ども医療費助成制度（乳幼児医療費助成制度、義務教育就学児医療費助成制度、
高校生等医療費助成制度）の医療証（自治体で異なる）。
②は通常は不要ですが、マイナ保険証のトラブル時に備えて持参が必要です。一方、
資格確認書（または従来の健康保険証）で受診する場合には、資格確認書と③の２種
類で資格確認が可能です。
２．暗証番号共有・失念の不安
マイナ保険証利用時に、暗証番号を失念し、３回間違えるとロックがかかります。
小児科受診時に同伴する養育者*は、小児一人に対し多岐に渡ります。この養育者全
員に暗証番号を確実に共有することは困難です。３人子どもがいれば３つの暗証番号
を養育者らで共有しなくてはなりません。このことから、マイナ保険証を登録しなか
ったり、登録しても使用しない養育者が多いのが現状です。
*父親、母親、祖父母、ベビーシッター、保育園の看護師・職員など
３．マイナ保険証が診療の阻害因子となる
オンライン資格確認システムや PC 不具合、停電、保護者の転職・転居等に伴う資
格情報の更新中などで資格確認ができないときは、「資格確認申立書」の記入が必要
となります（10 割負担回避目的）。しかし、この記入は煩雑で時間がかかるため、急
患が多い小児科では診療の阻害因子となります。
一方、休日の当番医療施設では、1 回限りの受診者が多く、事後的資格確認が不確
実で不安があるため、トラブルで資格確認ができない場合、10 割負担をお願いするこ
ともあると聞きました。このため、患者側にとっても負担の大きい制度となっていま
す。
また、顔認証できる小児でも養育者の介助が不可欠であることから、受付スタッフ
の補助業務が増え、医師の診察を受けるまでの時間もかかり、関係者全員にとって不
利益が生じています。
４．子ども医療証がマイナ保険証に紐付いていない
2024 年 11 月時点で、子ども医療証とマイナ保険証の紐付けを採択している自治体
は約 8.6％です。全国の市町村数 1724 に対し、149 市町村にすぎません。
マイナ保険証だけで受診できるとの誤解から、子ども医療証を持参しない患者も出

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