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提案書10(1802頁~2002頁)医療技術評価・再評価提案書 (108 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000190899_00011.html
出典情報 中央社会保険医療協議会 診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会(令和5年度第1回 11/20)《厚生労働省》
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「小児脳MRS加算」について

【対象疾患】
• 新生児脳症(低酸素性虚血性脳症を含む)
• 発達遅滞、退行、けいれん、意識障害等で発症する18才未満の小児神経代謝変性疾患を疑う症例

【技術の概要と現状】
臨床装置でMRIと同時に非侵襲的に脳内代謝をin vivoで計測できる手法であるが、追加ソフト等のコ
スト、15-30分以上の検査時間の延長に加え、小さな新生児・乳児の脳で適切にMRSを取得する技術
的困難さ、診断評価の高い専門性から、我が国では必要な状況で適切に使われているとは言い難く、
新生児低酸素性虚血性脳症の予後予測がより正確に行われておらず、また、MRSを追加することで
診断・モニターできる病態に適切に対応できていない。

【診療報酬上の取扱】
E 画像診断 500点
小さい新生児/小児脳に適切な対象領域を設定し良好なMRS波形
を得るためにはMRI担当技師の習熟を必要とし、診断医には発
達に伴う脳内正常代謝物の知識、稀少代謝疾患の病態に対する
知識が求められるため、専門性・難易度は非常に高い。また設
備コストと検査時間の延長にも対応する診療報酬として。
1)画像診断管理加算2または3を算定している。
2)MRI安全管理認証施設。
3)1.5テスラもしくは3テスラMR装置で撮像
4) 日本磁気共鳴専門技術者資格を有する診療放射線技師レベル

表1. 新生児低酸素性虚血性脳症における各種パラメーターの予後予測能
(文献1より引用)
223症例の多施設前向き研究の結果、神経学的所見、T1,T2強調像での内包所
見、拡散強調像に比べ、MRSにおけるLac/NAA、NAAの定量値は明らかに高
い予測能を示した。この結果からMRSを新生児脳症のルーチン検査に含むべ
きと結論づけている。

図1.

新生児低酸素性虚血性脳症
のMRS波形
(文献2より引用)
A:予後不良例
通常の代謝が損なわれ嫌気性代謝
亢進を示す乳酸(Lac) 上昇、神経細
胞活動を示すNAAの低下が見られ
る。
B:予後良好例
NAAは保たれLacの上昇も見られな
い。

図2 基底核・視床のMRSデータ・
ADC値の予後・経時的変化
(n=98)
(文献5より引用
- 追加エビデンス※ )
上段のグラフ:MRSにより取得さ
れたNAA値は生後からの経過時間
によらず、予後の良悪を明瞭に区
別できる。
下段のグラフ:拡散強調像より計
算されたADC値は生後早期では予
後良好群より不良群で低いが、生
後1週以降では値が逆転し予後を
予測できない。
1909

図 3. 5歳男児 脳クレアチン(Cr)欠乏症
知的障害で精査。MRIでは異常を認めないが、
MRSにて正常に認められるはずの矢印部分
のクレアチン(Cr) (図4正常例を参照)がほ
ぼ認められず酵素欠損による同症と確定診
断された。MRSでないと診断できない典型
的一例である。

図 4. 3歳男児正常MRS
(対照症例)
同じく知的障害でMRI
施行。MRS波形に異常
なく、Crのピーク(矢
印)は正常に確認され
る。