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資料1-2-6診断基準等のアップデート案(第49回指定難病検討委員会資料) (20 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25626.html
出典情報 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第49回 5/16)《厚生労働省》
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86 肺動脈性肺高血圧症
○ 概要
1.概要
旧来の典型的な(特発性肺動脈性肺高血圧症)IPAH/(遺伝性肺高血圧症)HPAH は、極めてまれな、特
に原因と思われる基礎疾患を持たない高度の肺高血圧を主徴とする疾患である。男女比は1:1.7 と女性に
多く、発症年齢も若年で、妊娠可能年齢の若い女性に好発する。発症頻度は 100 万人に1~2人と稀な疾
患で、治療介入を行わなかった場合、診断からの平均生存期間が 2.8 年と非常に予後不良であった。しか
し、最近の検討では小児期にも好発年齢帯が存在し、この時期の発症例では性差はないことも知られてき
た。本症はこれまで治療法が皆無であったが、1990 年以降に次々と治療薬が開発され、現時点では作用
機序の異なる3種類の治療薬が存在し、これらの単剤または組み合わせにより生命予後は改善してきた。
しかし、薬剤抵抗性の例では、適切な時期に肺移植を考慮する必要がある。
2.原因
HPAH の発症原因として遺伝子異常の存在が確認されている。これまでの報告では HPAH の約 70% に、
家族歴の確認されていない IPAH と診断された例でも約 20%に BMPR2 遺伝子の変異の存在が確認され
ている。また、他にも ACVRL1 遺伝子等の変異が報告がされつつある。しかし、遺伝子変異のない例にお
ける発症原因は未解決である。IPAH の発症原因は、現在も不明である。
3.症状
肺高血圧症の自覚症状としては、労作時呼吸困難、息切れ、易疲労感、動悸、胸痛、失神、咳嗽、腹部膨
満感などがみられる。いずれも軽度の肺高血圧では出現しにくく、症状が出現したときには、既に高度の肺
高血圧が認められることが多い。また、高度肺高血圧症には労作時の突然死の危険性がある。さらに、進
行例では、頸静脈怒張、肝腫大、下腿浮腫、腹水などがみられる。その他、肺高血圧症の原因となる基礎
疾患に伴う様々な身体所見がみられる。
4.治療法
IPAH/HPAH に対する内科的治療法は近年飛躍的に発展した。現在我が国ではプロスタサイクリン経路
に属するプロスタサイクリンとその誘導体、エンドセリン経路に属するエンドセリン受容体拮抗薬(ERA)、及
び一酸化窒素(NO)経路に属するホスホジエステラーゼ 5 阻害薬(PDE5-I)のそれぞれ異なった3系統の特
異的 PAH 治療薬が存在する。
5.予後
IPAH/HPAH の自然歴は極めて不良で、旧来の報告では、発症後の平均生存期間は成人例未治療の場
合 2.8 年で、死因は突然死、右心不全、喀血が多いとされていた。小児の未治療 IPAH/HPAH の予後は、
成人に比較してさらに不良で、平均生存期間が 10 か月であると報告されている。我が国では IPAH/HPAH
の自然予後に関する全国規模でのデータは存在しない。単施設の結果ではあるが、治療薬が存在しなか

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