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【資料3】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状について(研究報告、今後の厚生労働省の対応)(報告) (23 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_62310.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 感染症部会(第96回 9/3)《厚生労働省》 |
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令和6年度 新型コロナウイルスの罹患後症状とME/CFSに類似する症候の関連性(住民調査)
研究分担者:国立国際医療研究センター国際医療協力局グローバルヘルス政策研究センター・センター長
磯博康
本研究の主な結果と考察
➢ 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染者と非感染者の比較では、ME/CFSに類似する症候を有する者の割合は、感染者で0.56%(八尾市)/0.79%
(札幌市)、非感染者で0.54%(八尾市)/ 0.24%(札幌市)であった。
➢ ME/CFSに類似する症候を有し、かつ労作後の消耗が14時間以上続く者の割合は、感染者では0.24%(八尾市)/0.62%(札幌市) 、非感染者で0.08 %(八
尾市) /0.24%(札幌市)であった。
※ 八尾市の調査では、感染3か月後時点で罹患後症状を有したと回答した者は、罹患後症状がなかったと回答した者に比べて、 ME/CFSに類似する症候を有する者の割合とME/CFSに類
似する症候を有しかつ労作後の消耗が14時間以上続く者の割合は有意に高かったが、札幌市では有意差は認められなかった。
⇒ 住民調査においては、ME/CFSに類似する症候を有する者の割合は、統計学的な有意差は認められなかった。また、いずれの群においても該当者が少ないこと
には留意が必要である。
対象
八尾市:2023年度の調査に回答した、2021年3月以降(第4波以降)のCOVID-19感染者と非感染者
札幌市:ベースライン調査(20歳以上は2021年度調査、18~19歳は2022年度調査)に回答し、かつ2023年度調
査に回答した、 2021年3月以降(第4波以降)のCOVID-19感染者と非感染者
罹患後症状の定義
罹患後症状:感染者において2か月以上持続し、かつ初回感染から3か月時点で有した症状
遷延症状:非感染者において2024年1月(八尾市)/2月(札幌市)から回答時点までの間で2か月以上続いた症状
【今回用いたIOM基準等に関する質問項目】
・過去4週間の身体機能の低下による仕事や日常生活への支障
・過去4週間の身体的・情緒的問題による社会活動への制限の頻度
・活力(元気/疲労)の頻度
・最小限の身体的あるいは精神的努力をした後の疲労感、倦怠感、その他症状の悪化の有無。悪化があ
る者においては、その持続時間
・過去6か月間の7症状の頻度と程度:①疲労/極度の疲れ ②激しくない日常の労作をしただけで、翌
日、痛みや疲労がある ③最小限の労作でも身体的に疲れてしまう ④朝目覚めたときに爽快感がない
ME/CFSに類似する症候の調査方法
下記についてアンケート調査を行った。
・DSQ-SF*のうち、IOM基準**に当てはまる項目
・ME/CFSの中核症状である労作後の消耗(PEM:Post-Exertional Malaise)の持続時間(カットオフ値:
ME/CFS患者の約9割が該当する「14時間以上」)
IOM基準に合致する回答者を「ME/CFSに類似する症候あり」として定義し、PEMの持続時間とあわせて感染者・
非感染者、罹患後症状のある者とない者で比較した。
*DSQ-SF:DePaul Symptom Questionnaire-Short Form。ME/CFSの症状評価に使われる質問紙。
** IOM基準:The Institute of Medicine 2015 diagnostic criteria for ME/CFS。米国医学研究所(IOM)が提
唱したME/CFSの診断基準。
結果
八尾市(成人)
感染者
解析対象者数
感染者
•
疲労
•
労作後倦怠感
•
睡眠をとっても回復しない
上記のすべてを満たす
•
•
認知機能の障害
起立不耐症
上記のいずれかを満たす
感染者
非感染者
2,508
924
1,138
410
44.3 (12.1)
46.5 (12.8)
43.4 (13.8)
46.2 (14.0)
男性
女性
平均年齢、歳(SD)
3項目すべてを満たす場合にIOM基準に合致と判断した。
•
身体機能の低下による仕事や日常生活への支障
•
身体的・情緒的問題による社会活動への制限
•
活力(元気/疲れやすさ)の低下
上記の2つ以上を満たす
全体
札幌市(成人)
非感染者
⑤記憶障害 ⑥長時間集中することが難しい ⑦足元がふらつき、倒れる感じがする
八尾市(成人)
札幌市(成人)
八尾市(成人)
札幌市(成人)
性別、人(%)
883 (35.2)
348 (37.7)
437 (38.4)
160 (39.0)
1,624 (63.8)
575 (62.2)
696 (61.2)
248 (60.5)
その他
1 (0.03)
1 (0.1)
5 (0.4)
2 (0.5)
平均追跡期間、月(SD)
29.3 (8.8)
–
無症状
106 (4.2)
軽症
2,122 (84.6)
18 (0.7)
重症
23 (0.9)
欠損
228 (9.1)
31.2 (12.1)
–
–
19 (1.7)
–
–
872 (76.6)
–
–
17 (1.5)
–
–
5 (0.4)
–
–
225 (19.8)
–
COVID-19の重症度、人(%)
中等症Ⅰ・Ⅱ
IOM基準合致, 人(%)
IOM基準合致、かつ
PEMの持続時間が 14
時間以上, 人 (%)
感染者
(n=2,508)
非感染者
(n=924)
n
14
(%)
(0.56)
n
5
6
(0.24)
1
罹患後症状
あり
(n=307)
罹患後症状
なし
(n=2,201)
(%)
(0.24) 0.41
n
6
(%)
(1.95)
n
8
(0.24) 0.88
3
(0.98)
3
感染者
(n=1,138)
非感染者
(n=410)
(%)
(0.54) 0.18
n
9
(%)
(0.79)
n
1
(0.08) 0.46
7
(0.62)
1
p
p
罹患後症状
あり
(n=220)
罹患後症状
なし
(n=918)
(%)
(0.36) >0.01
n
4
(%)
(1.82)
n
5
(%)
(0.54) 0.91
(0.14) 0.02
4
(1.82)
3
(0.33) 0.37
p
【研究の留意事項】・各調査にて対象とした感染時期に新型コロナウイルスに感染した者を「感染者」、感染しなかった者を「非感染者」としている
・一般的に回答率は症状のある者で高くなる傾向(回答バイアス)があることから、罹患後症状を有した者の割合や、ME/CFSに類似する症候を有する者の割合の解釈には留意が必要である。
・感染者、非感染者ともに想起バイアスの影響は否定できない。
・アンケート調査であるため、医師による鑑別診断(詳細な問診や身体診察および検査による他疾患の除外等)を行っておらず、他疾患による症状が含まれている可能性は否定できない。
・今回はIOM基準を用いたが、ME/CFSの診断基準自体がまだ定まっていない点は留意が必要である。
p
23
研究分担者:国立国際医療研究センター国際医療協力局グローバルヘルス政策研究センター・センター長
磯博康
本研究の主な結果と考察
➢ 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染者と非感染者の比較では、ME/CFSに類似する症候を有する者の割合は、感染者で0.56%(八尾市)/0.79%
(札幌市)、非感染者で0.54%(八尾市)/ 0.24%(札幌市)であった。
➢ ME/CFSに類似する症候を有し、かつ労作後の消耗が14時間以上続く者の割合は、感染者では0.24%(八尾市)/0.62%(札幌市) 、非感染者で0.08 %(八
尾市) /0.24%(札幌市)であった。
※ 八尾市の調査では、感染3か月後時点で罹患後症状を有したと回答した者は、罹患後症状がなかったと回答した者に比べて、 ME/CFSに類似する症候を有する者の割合とME/CFSに類
似する症候を有しかつ労作後の消耗が14時間以上続く者の割合は有意に高かったが、札幌市では有意差は認められなかった。
⇒ 住民調査においては、ME/CFSに類似する症候を有する者の割合は、統計学的な有意差は認められなかった。また、いずれの群においても該当者が少ないこと
には留意が必要である。
対象
八尾市:2023年度の調査に回答した、2021年3月以降(第4波以降)のCOVID-19感染者と非感染者
札幌市:ベースライン調査(20歳以上は2021年度調査、18~19歳は2022年度調査)に回答し、かつ2023年度調
査に回答した、 2021年3月以降(第4波以降)のCOVID-19感染者と非感染者
罹患後症状の定義
罹患後症状:感染者において2か月以上持続し、かつ初回感染から3か月時点で有した症状
遷延症状:非感染者において2024年1月(八尾市)/2月(札幌市)から回答時点までの間で2か月以上続いた症状
【今回用いたIOM基準等に関する質問項目】
・過去4週間の身体機能の低下による仕事や日常生活への支障
・過去4週間の身体的・情緒的問題による社会活動への制限の頻度
・活力(元気/疲労)の頻度
・最小限の身体的あるいは精神的努力をした後の疲労感、倦怠感、その他症状の悪化の有無。悪化があ
る者においては、その持続時間
・過去6か月間の7症状の頻度と程度:①疲労/極度の疲れ ②激しくない日常の労作をしただけで、翌
日、痛みや疲労がある ③最小限の労作でも身体的に疲れてしまう ④朝目覚めたときに爽快感がない
ME/CFSに類似する症候の調査方法
下記についてアンケート調査を行った。
・DSQ-SF*のうち、IOM基準**に当てはまる項目
・ME/CFSの中核症状である労作後の消耗(PEM:Post-Exertional Malaise)の持続時間(カットオフ値:
ME/CFS患者の約9割が該当する「14時間以上」)
IOM基準に合致する回答者を「ME/CFSに類似する症候あり」として定義し、PEMの持続時間とあわせて感染者・
非感染者、罹患後症状のある者とない者で比較した。
*DSQ-SF:DePaul Symptom Questionnaire-Short Form。ME/CFSの症状評価に使われる質問紙。
** IOM基準:The Institute of Medicine 2015 diagnostic criteria for ME/CFS。米国医学研究所(IOM)が提
唱したME/CFSの診断基準。
結果
八尾市(成人)
感染者
解析対象者数
感染者
•
疲労
•
労作後倦怠感
•
睡眠をとっても回復しない
上記のすべてを満たす
•
•
認知機能の障害
起立不耐症
上記のいずれかを満たす
感染者
非感染者
2,508
924
1,138
410
44.3 (12.1)
46.5 (12.8)
43.4 (13.8)
46.2 (14.0)
男性
女性
平均年齢、歳(SD)
3項目すべてを満たす場合にIOM基準に合致と判断した。
•
身体機能の低下による仕事や日常生活への支障
•
身体的・情緒的問題による社会活動への制限
•
活力(元気/疲れやすさ)の低下
上記の2つ以上を満たす
全体
札幌市(成人)
非感染者
⑤記憶障害 ⑥長時間集中することが難しい ⑦足元がふらつき、倒れる感じがする
八尾市(成人)
札幌市(成人)
八尾市(成人)
札幌市(成人)
性別、人(%)
883 (35.2)
348 (37.7)
437 (38.4)
160 (39.0)
1,624 (63.8)
575 (62.2)
696 (61.2)
248 (60.5)
その他
1 (0.03)
1 (0.1)
5 (0.4)
2 (0.5)
平均追跡期間、月(SD)
29.3 (8.8)
–
無症状
106 (4.2)
軽症
2,122 (84.6)
18 (0.7)
重症
23 (0.9)
欠損
228 (9.1)
31.2 (12.1)
–
–
19 (1.7)
–
–
872 (76.6)
–
–
17 (1.5)
–
–
5 (0.4)
–
–
225 (19.8)
–
COVID-19の重症度、人(%)
中等症Ⅰ・Ⅱ
IOM基準合致, 人(%)
IOM基準合致、かつ
PEMの持続時間が 14
時間以上, 人 (%)
感染者
(n=2,508)
非感染者
(n=924)
n
14
(%)
(0.56)
n
5
6
(0.24)
1
罹患後症状
あり
(n=307)
罹患後症状
なし
(n=2,201)
(%)
(0.24) 0.41
n
6
(%)
(1.95)
n
8
(0.24) 0.88
3
(0.98)
3
感染者
(n=1,138)
非感染者
(n=410)
(%)
(0.54) 0.18
n
9
(%)
(0.79)
n
1
(0.08) 0.46
7
(0.62)
1
p
p
罹患後症状
あり
(n=220)
罹患後症状
なし
(n=918)
(%)
(0.36) >0.01
n
4
(%)
(1.82)
n
5
(%)
(0.54) 0.91
(0.14) 0.02
4
(1.82)
3
(0.33) 0.37
p
【研究の留意事項】・各調査にて対象とした感染時期に新型コロナウイルスに感染した者を「感染者」、感染しなかった者を「非感染者」としている
・一般的に回答率は症状のある者で高くなる傾向(回答バイアス)があることから、罹患後症状を有した者の割合や、ME/CFSに類似する症候を有する者の割合の解釈には留意が必要である。
・感染者、非感染者ともに想起バイアスの影響は否定できない。
・アンケート調査であるため、医師による鑑別診断(詳細な問診や身体診察および検査による他疾患の除外等)を行っておらず、他疾患による症状が含まれている可能性は否定できない。
・今回はIOM基準を用いたが、ME/CFSの診断基準自体がまだ定まっていない点は留意が必要である。
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