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公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00332.html
出典情報 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第7.0版」の周知について(2/28付 事務連絡)《厚生労働省》
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●新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き・第 7.0 版 ●2 臨床像

【COVID-19 流行下における小児の予防接種】
COVID−19 流行による世界的な予防接種率の低下により,世界全体でのワクチンで予防でき
る疾患(VPD)に対する集団免疫が低下することが懸念されている.
COVID−19 流行下でも,すべての年齢において推奨される接種スケジュールを遵守するこ
とは,それぞれのワクチンの有効性および安全性を最大限確保するうえでも非常に重要である.
一方で保護者が安心して接種するためには,電話などで事前にかかりつけ医と接種日時を調整
するなどの工夫も必要である.また,やむを得ず接種が遅れたワクチンがある場合は,なるべ
く早期にキャッチアップ接種をする必要がある.地方自治体によっては定期接種時期を超えて
いても特例として,定期接種に準じた接種を認めている自治体もあるので,居住地域の保健所
に相談してもらいたい.
【小児多系統炎症性症候群 MIS-C: multisystem inflammatory syndrome in children】
欧米では 2020 年 2 月以降の COVID-19 パンデミックに伴い,20 歳以下の感染者の中に複
数臓器に強い炎症を認める小児多系統炎症性症候群(MIS-C)を発症し,その中に川崎病と類
似した症例のあることが報告された.
典型的な経過は,無症状・軽症の COVID-19 罹患から 2 ~6週後に,高熱と下痢,嘔吐,
腹痛などの消化器症状と,前後して血圧低下,ショック,心不全を呈し,しばしば発疹や眼球
結膜充血,口唇・口腔粘膜の発赤やいちご舌,指趾の発赤など,川崎病に類似した症状群を伴う.
36%では川崎病の診断基準を満たし,30%では不全型とも診断しうる.一部には川崎病と同
様に冠動脈の拡張や瘤形成が報告され,痙攣,意識障害などの神経症状や,腎障害などを併発
する例もある.多くの炎症性マーカーが上昇する.
日本小児科学会・日本集中治療医学会による小児重症 COVID-19 registry によれば,2021
年 7 月~ 2022 年 1 月までに 11 例(うち死亡 0 例)の MIS-C が報告されている.その合併率
は米国に比べはるかに少なく,川崎病の人種差とは対照的に東アジア人種には発症しにくい要
因のあることが示唆される.症例報告された4例は,年齢9~ 16 歳 ( 平均 11 歳 ),男児3例で,
COVID-19 罹患から平均 28 日で高熱と強い消化器症状で発症した.川崎病主要6症状を3例
に認めた.発症から数日以内にショックとなり,
急性心筋炎の診断例もあった.入院時検査値
(平
均)は,CRP 22.1 mg/dL,好中球比率 92%,リンパ球比率 3.1%,血小板数 16.9 万 / μ L,
血清ナトリウム 130 mEq/L,フェリチン,D ダイマー,IL-6 や BNP または NT-pro BNP の
上昇など,欧米の報告と特徴が一致している.発症時には抗原や PCR はすでに陰性化してい
る例があるので,血清診断が必要である.補液と同時にカテコラミンや利尿薬を併用した慎重
な循環管理が必要であり,川崎病と同様に免疫グロブリン大量静注と,症例によっては,ステ
ロイド(プレドニゾロン 2 mg/kg あるいはメチルプレドニゾロン 30 mg/kg のパルス療法)
投与が行われた.入院期間は 14 ~ 21 日で死亡例はない.冠動脈拡張は1例(最大時の Z スコ
ア 3.9)のみで回復期には正常化した.
オミクロン株による小児感染者の増加に伴い,MIS-C の症例が今後増加する可能性があり,
注意が必要と考えられる.

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