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参考資料4.セルフメディケーション税制による 薬剤費抑制効果の検証(西川・大橋 RIETI Discussion Paper Series 22-J-039(2022)(独)経済産業研究所) (21 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59938.html
出典情報 セルフケア・セルフメディケーション推進に関する有識者検討会(第4回 7/25)《厚生労働省》
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必要がある。減税額の試算に当たっては、個人のスイッチ OTC の購入額、所得に応じた
減税額といった数値が必要となるが、これら情報は公表されていない。そのため、減税額
を精緻に試算することは困難だが、いくつかの仮定を課し、本節では非常に粗い形ではあ
るが税収の減少分を試算し、セルフメディケーション税制の費用対効果を検証する。
本稿の分析結果に基づくと、セルフメディケーション税制の導入により、アレルギー性
鼻炎で医療機関を受診した被保険者数は 2018 年 2~5 月にかけて 2 万 7310 人減少し、医
療機関で“処方なし”から“処方あり”に切り替えられた患者は 1 万 6488 名増大したことにな
る 35。本節の試算では、前者の 2 万 7310 人については全員がアレルギー性鼻炎薬のスイッ
チ OTC を購入し始め、後者についても 1 万 6488 名全員が医療機関で処方される前はアレ
ルギー性鼻炎薬のスイッチ OTC を購入していたと仮定する。
ただし、上記の 2 万 7310 人、1 万 6488 名は延べ人数であるため、セルフメディケーシ
ョン税制の利用実態を把握するには、それぞれの実人数を明らかにする必要がある。この
実人数については、前節の推定結果からの推測が困難なため、分析に用いたデータセット
に基づき試算した。具体的には、医療機関への受診者、医療機関で処方のあった患者につ
いて、それぞれの延べ人数と実人数の比率(=実人数/延べ人数)を計算し 36、上記の延べ
人数に乗じた。結果として、医療機関への受診を控えた実人数 14896 人、医療機関で処方
のあった患者の実人数 10878 人を得た。
次に、セルフメディケーション税制による所得控除を受けた人数について検討する。セ
ルフメディケーション税制による所得控除を受けるには 1.2 万円以上のスイッチ OTC の購
入が求められる。五十嵐(2022)が行った調査によると、2020 年の数値ではあるが、セル
フメディケーション税制の対象となる OTC を購入していた回答者は 8041 名で、その 5.6%
に該当する 447 名が 1.2 万円以上を購入していた。本節ではこの 5.6%という数値を用い
て、セルフメディケーション税制による所得控除を受けた人数を試算する 37。
さらに、セルフメディケーション税制による減税額を試算するには、申請者がどの程度
の減税を受けたかを把握する必要がある。この点については、日本 OTC 医薬品協会が国
税庁の公表内容に基づき試算した 2020 年の数値を用いる。同協会は、セルフメディケーシ
ョン税制を通じて所得控除を受けたのは 3 万人、減税規模は 1 億円と試算しており、この
35

セルフメディケーション税制が導入された実際の医療機関受診者数は 100.8 万人だった。この 100.8 万

人に対して、表 8 にある仮想値、観測値の“処方あり”のシェアである 89.6%、91.3% をそれぞれ乗じ、差
をとることで“処方なし”から“処方あり”に切り替えられた患者数 1 万 6488 名を得た。
36

2018 年 2~5 月にかけての医療機関への受診者の延べ人数 100.8 万人、実人数 55.0 万人より、延べ人

数と実人数の比率である 0.545 を得た。医療機関で処方のあった患者についても同様の方法で、比率であ
る 0.660 を得た。
37

田口等(2021)も同様の調査を行っており、同調査ではスイッチ OTC を購入し、かつ購入金額を把握

していた 237 名のうち、12.2%に該当する 29 名が 1.2 万円以上を購入していた。ただし、当該調査の対
象がスイッチ OTC やセルフメディケーション税制への関心が高いと考えられる健康セミナー参加者であ
ったため、本稿では五十嵐(2022)の数値を用いた。

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