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参考資料4.セルフメディケーション税制による 薬剤費抑制効果の検証(西川・大橋 RIETI Discussion Paper Series 22-J-039(2022)(独)経済産業研究所) (20 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59938.html |
出典情報 | セルフケア・セルフメディケーション推進に関する有識者検討会(第4回 7/25)《厚生労働省》 |
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炎薬の処方量が増大したことが分かる。具体的には、セルフメディケーション税制が導入
されなかったとする仮想値での“抗ヒスタミン薬:第1世代”から“気管支喘息薬”までのシ
ェアの合計が 89.6%に対して観測値は 91.3%であるため、政策を通じて、医療機関を受診
した患者への処方量が 1.8%増加したことになる。
表 8 にはセルフメディケーション税制の影響を診療所、病院に分けて集計した結果も記
している。仮想値と観測値の差に注目すると、診療所では処方量が 1.6 %ポイント(=
92.0%-90.4%)増大しているのに対し、病院は 1.9%ポイント(=85.8%-83.9%)の増
大と、病院への影響が大きかったことを示す。ただし、診療所については誘発的な需要の
存在を示唆する結果が得られており、セルフメディケーション税制が導入されなかった仮
想値においても、既に処方ありの患者が 9 割を超えている。したがって、今回の結果は、
追加的な医療サービス提供の余地が、病院よりも診療所で小さかったことが影響したと解
釈できる。
次に、セルフメディケーション税制による薬剤費への影響を試算した。結果は表 8 の下
段に記しているが、セルフメディケーション税制の導入により、医療機関におけるアレル
ギー性鼻炎薬の処方量が 1.8%増加したことで、薬剤費は仮想値の 18 億 320.0 万円から観
測値の 18 億 2998.3 万円へと 1.5%(2678.3 万円)増大した結果が得られた。なお診療所、
病院別の医療費への影響については、アレルギー性鼻炎を有する患者の大半が診療所を受
診していこともあり、増大した 2678.3 万円の薬剤費の 85.0%を診療所が占める結果となっ
た。
なお、本節の冒頭で試算した通り、セルフメディケーション税制を通じて、2 万 7310 人
の被保険者が医療機関への受診からスイッチ OTC の購入に切り替えていた。これら被保
険者については、医療機関への受診を控えたことで薬剤費の抑制に寄与したことになる。
本稿では、この医療機関受診からスイッチ OTC 購入へ切り替えが進んだことによる薬剤
費への影響を定量化する。具体的には、政策により受診を控えた 2 万 7310 人について、仮
に受診していた場合、表 8 の全医療機関にある仮想値の各保険適用薬(処方なしを含む)
のシェアに基づく処方(14 日分)がなされたと仮定する。この仮定に従うと、今回の分析
対象であるアレルギー性鼻炎薬市場においては、患者の受診行動の変化を通じて、3159.6
万円の薬剤費が抑制されたことになる。
以上より、本稿で用いたアレルギー性鼻炎薬市場を対象としたデータセットにおいて、
セルフメディケーション税制の導入は、患者の受診行動の変化を通じて-3159.6 万円の薬
剤費の抑制に寄与した。しかしながら、医師の処方量増大により薬剤費が 2678.3 万円押し
上げられたことで、全体としての財政効果は-481.3 万円(-0.26%)に止まる結果となった。
6-2 税収入を加味した費用対効果
セルフメディケーション税制は、スイッチ OTC 購入者への減税政策であるため、その
影響をより正確に評価するには、効果である薬剤費抑制額と費用である減税額を比較する
18
されなかったとする仮想値での“抗ヒスタミン薬:第1世代”から“気管支喘息薬”までのシ
ェアの合計が 89.6%に対して観測値は 91.3%であるため、政策を通じて、医療機関を受診
した患者への処方量が 1.8%増加したことになる。
表 8 にはセルフメディケーション税制の影響を診療所、病院に分けて集計した結果も記
している。仮想値と観測値の差に注目すると、診療所では処方量が 1.6 %ポイント(=
92.0%-90.4%)増大しているのに対し、病院は 1.9%ポイント(=85.8%-83.9%)の増
大と、病院への影響が大きかったことを示す。ただし、診療所については誘発的な需要の
存在を示唆する結果が得られており、セルフメディケーション税制が導入されなかった仮
想値においても、既に処方ありの患者が 9 割を超えている。したがって、今回の結果は、
追加的な医療サービス提供の余地が、病院よりも診療所で小さかったことが影響したと解
釈できる。
次に、セルフメディケーション税制による薬剤費への影響を試算した。結果は表 8 の下
段に記しているが、セルフメディケーション税制の導入により、医療機関におけるアレル
ギー性鼻炎薬の処方量が 1.8%増加したことで、薬剤費は仮想値の 18 億 320.0 万円から観
測値の 18 億 2998.3 万円へと 1.5%(2678.3 万円)増大した結果が得られた。なお診療所、
病院別の医療費への影響については、アレルギー性鼻炎を有する患者の大半が診療所を受
診していこともあり、増大した 2678.3 万円の薬剤費の 85.0%を診療所が占める結果となっ
た。
なお、本節の冒頭で試算した通り、セルフメディケーション税制を通じて、2 万 7310 人
の被保険者が医療機関への受診からスイッチ OTC の購入に切り替えていた。これら被保
険者については、医療機関への受診を控えたことで薬剤費の抑制に寄与したことになる。
本稿では、この医療機関受診からスイッチ OTC 購入へ切り替えが進んだことによる薬剤
費への影響を定量化する。具体的には、政策により受診を控えた 2 万 7310 人について、仮
に受診していた場合、表 8 の全医療機関にある仮想値の各保険適用薬(処方なしを含む)
のシェアに基づく処方(14 日分)がなされたと仮定する。この仮定に従うと、今回の分析
対象であるアレルギー性鼻炎薬市場においては、患者の受診行動の変化を通じて、3159.6
万円の薬剤費が抑制されたことになる。
以上より、本稿で用いたアレルギー性鼻炎薬市場を対象としたデータセットにおいて、
セルフメディケーション税制の導入は、患者の受診行動の変化を通じて-3159.6 万円の薬
剤費の抑制に寄与した。しかしながら、医師の処方量増大により薬剤費が 2678.3 万円押し
上げられたことで、全体としての財政効果は-481.3 万円(-0.26%)に止まる結果となった。
6-2 税収入を加味した費用対効果
セルフメディケーション税制は、スイッチ OTC 購入者への減税政策であるため、その
影響をより正確に評価するには、効果である薬剤費抑制額と費用である減税額を比較する
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