よむ、つかう、まなぶ。

MC plus(エムシープラス)は、診療報酬・介護報酬改定関連のニュース、

資料、研修などをパッケージした総合メディアです。


参考資料4 がん検診Shared Decision Making(SDM)運用マニュアル2022年度版 (7 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34640.html
出典情報 がん検診のあり方に関する検討会(第39回 8/9)《厚生労働省》
低解像度画像をダウンロード

資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。

Ⅱ. SDM の概念
1. SDM の定義
米国 Institute of Medicine(現:National Academy of Medicine)では、患者の要望や価値観を確
認し、意思決定に必要となる教育や支援を提供するとともに、患者が自らのケアに参画することを
求めている 1)。しかし、医療者と患者の情報の非対称性が拡大し、専門知識に基づく医療者の判
断と患者が本来望む医療の乖離は preference misdiagnosis として指摘されている 2, 3, 4, 5)。
患者参加型医療を勧める欧米では、患者の自律性や価値観を尊重する必要性が早くから認識
されていた。SDM は 1982 年に米国のレーガン大統領の諮問機関による造語であり、従来型のイ
ンフォームドコンセントの発展型として位置づけられている 6)。患者中心主義に基づく 2 つの価値
観として、個人の幸福と自己決定権をあげ、その推進のために相互の信頼と協力に基づいて行わ
れるべきものとしている。さらに、単に医療技術の選択肢を提示するだけのプロセスではなく、利
益・不利益、費用、不確実性を伝えることが必要とされている。以来 40 年に亘り、SDM の関連研
究が進み、SDM は医療のすべての分野において取り入れられてきた。
SDM は診断・治療の過程に含まれるべきものであり、患者の理解を深めるばかりでなく意思決
定過程に取り込み、利用可能な医療の利益やリスク、選択肢、医療行為の結果などを理解し、科
学的根拠と個人の価値観の観点から望ましい医療を選択することを支援する方法である 7)。インフ
ォームドコンセントはしばしば、SDM と同義と捉えられている。インフォームドコンセントは法的な観
点から導入されており(国内では医療法)、SDM とは厳密には異なっている。ただし、インフォーム
ドコンセントは患者の同意の確認ではなく、積極的な意思表明を求めており、そのために医療者は
医療情報の提供を正しく行う必要がある 8)。一方、SDM は、医療における意思決定過程における
患者参画を推進し、医療者が患者にとってより良い選択をともに行うことにある。医療技術の進歩
で患者に複数の選択肢を提供できるようになったが、複雑化した医療の中で個人にとって最適な
医療を選択することは容易ではない。こうした医療の変化に伴い、SDM の役割がさらに重要となっ
ている。
SDM は、より広く患者の視点を取り込み、意思決定への参画を促すことで、すべての医療現場
において医療者の支援のもと、患者がより良い選択に至るプロセスである 9)(表 1)。しかし、我が国
では、SDM の概念は正しく広まっておらず、従来型のインフォームドコンセントと同義の、情報伝達
の機会として捉えられている。インフォームドコンセントとは異なり、SDM では公平性を確保し、
健康格差を改善することが重視されている。情報やコミュニケーションの不足のため、受けられるべ
き医療が受けられないという状況を可能な限り回避し、医療への公平なアクセスを確保することが
必要となる。特に、社会的弱者にとって、正しい知識を提供することにより、保健医療における公平
性を確保できることが指摘されている。このため、健康に関する知識レベルの低い人々にも様々な
ツールを用いて正しい情報を伝え、疑問に答えることが強調されている。我が国ではともすれば、
医療者から患者への一方向性の情報伝達となりがちだが、本来的には患者の権利と社会的公平
性を保つことで、誰もが健康な生活を享受できることを目標としている。
3