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参考資料4 がん検診Shared Decision Making(SDM)運用マニュアル2022年度版 (17 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34640.html
出典情報 がん検診のあり方に関する検討会(第39回 8/9)《厚生労働省》
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2. DA の活用
DA による介入の効果を検証した初めてのランダム化比較試験は 1996 年に米国で発表されて
いる。以来、欧米諸国では多くのランダム化比較試験が実施され、がん検診の受診を決断する際
に重要な 3 つの要因に対する DA の効果が確立されてきた。①がん検診に対する知識、②受診
決断における葛藤、③SDM に対する患者(受診者)の捉え方の 3 因子である。具体的には、DA
を使用すると(使用しない場合と比較して)検診に対する知識が増え、参加決断の葛藤が解消され、
SDM が良好にできたと感じる人が増加する。
この 3 因子以外にもがん検診の受診を決断する際に重要かもしれない要素がいくつか検討され
ている。例えば、決断に至る態度、決断への確信、決断に対する後悔、SDM における闊達な議論、
決断へのかかわり度合い、不安などである。しかし、これらの要因についてはまだ十分な研究が実
施されておらず、一定の結論には至っていない。
DA を用いた受診行動(受診に対する意思や実際の受診)に対する効果についても多くのランダ
ム化比較試験が行われ、概ね結果は一致している。具体的には、DA を使用すると(使用しない場
合と比較して)前立腺がん検診と乳がん検診については受診行動(受診意思・実際の受診)が減
少し、大腸がん検診では受診行動(受診意思・実際の受診)が増加した。一方、肺がん検診では十
分な研究が依然として実施されておらず、一定の結論には至っていない。がん種ごとの受診行動
の違いには、個々のがん種に対する検診自体の有効性と不利益に関する科学的根拠の違いも影
響する。DA により SDM が円滑に行われ、個々のがん検診自体の正確な情報が提供され、対象
者は検診についての十分な知識を獲得し、葛藤が解消され、おそらく個人の価値観に基づいて適
切な行動がなされたと解釈できる。
3. USPSTF における SDM
USPSTF は予防対策における SDM の進め方として、系統的に 5 段階のアプローチ「5A
Framework」を勧めている(表 5)1)。評価(ASSESS)の段階で、患者(受診者)の要望を確認した
上で、助言(ADVISE)で科学的根拠に基づく推奨グレード A と B に相当する予防対策を勧め、代
替案を提示しつつ、利益・不利益、科学的根拠の不確実性などの情報を提供する。同意(AGREE)
を経て、支援(ASSIST)を行う。さらには、調整(ARRANGE)の段階で経過観察し、次のアクション
につなげるという方法である。同法は行動変容のカウンセリングに応用されている 2)。
USPSTF は、科学的根拠に基づき推奨グレードを設定しているが、患者(受診者)自身の価値観
(value/preference)に基づく選択を重視している 1)。推奨グレードは科学的根拠を示すだけではな
く、各グレードに応じた情報提供を行い、患者(受診者)の価値観を尊重し選択できるよう支援する
ことを勧めている。最近では SDM の考え方をより反映し、ガイドラインの推奨グレードにより SDM
の対象、情報提供の内容や提示方法を提案している(表 6)3)。推奨のグレードにかかわらず、すべ
ての検診方法の選択には SDM が必要となる。ただし、グレードごとに提供する情報は異なってい
る(表 7)。推奨グレード A では検診方法の基本的な情報に限定されるが、推奨グレード B や C で
は利益・不利益を具体的に示すことで、患者(受診者)がより具体的に検討できるような形で情報が
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