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参考資料4 がん検診Shared Decision Making(SDM)運用マニュアル2022年度版 (5 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34640.html
出典情報 がん検診のあり方に関する検討会(第39回 8/9)《厚生労働省》
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Ⅰ. はじめに
がん対策推進基本計画において、検診受診率の目標値が掲げられて以来 1)、官民あげて様々
な受診率対策が取り上げられてきた。がん対策推進基本計画の目標値 50%には未だ届かないも
のの、国民生活基礎調査からはがん検診の増加が示されている 2)。しかしながら、今なお、我が国
の受診率は欧米に比べ低く、科学的根拠が確立したがん検診であっても十分な成果を上げてい
ない 3)。これまでの受診率対策は対象者への一律アプローチ、あるいは興味を示す(受診の可能
性のある)対象者を標的としたアプローチに限定されてきた。前者の代表例はコール・リコールシス
テムであり、組織型検診を導入している国々で採用されており、がん検診のシステム構築の基本と
される 4)。一方、後者は受診の可能性がある対象者が興味のある情報を提供したり、誘導する方法
であり、近年ではナッジが応用されている 5)。がん検診の受診率対策には、個別の対策よりも、複
数の対策の組み合わせが有効とされている。これらの様々な対策の成果が徐々に受診率を押し上
げてきたことも確かである。しかし、一定割合の受診困難者(hard-to-reach)も存在し、その対策は
検討されていない 6,7,8)。社会的弱者であるがゆえに、がん検診の情報や受診機会にアクセスでき
ないということは、健康格差の一因であり、公共政策の本来の理念にも反する。
一方、医療提供プロセスにおいて、患者中心主義の流れの中で、診療における基礎的技術で
ある「患者の声を聴く」ことに立ち返ることが求められている。我が国では、医療者のパターナリズム
が堅固であり、患者が医療の選択に参加することは困難な状況である 9)。しかし、コロナ禍におい
て、ワクチン接種やマスク着用をめぐる様々な議論が続き、一般市民の価値観が医療の選択にお
いても認識されるに至った。誰もが持つ自己決定権を保障しつつも、科学的根拠に基づく情報を
正しく選択できるよう支援していくことが、医療者に求めれられる役割である。診断・治療だけでなく、
がん検診を含む予防対策の分野でも、患者(受診者)の権利は同様に保障されるべきである。その
手段として、Shared Decision Making[(SDM)、患者(受診者)・医療者による共同意思決定]が注
目されている。
厚生労働科学研究費補助金(がん対策推進総合研究事業)濱島班では、がん検診における
SDM の応用を目標とし、我が国における受診率対策や情報提供の問題点を明らかにするとともに、
SDM の運用のために本マニュアルを作成した。
文献
1)

厚生労働省. がん対策推進基本計画. 2007.
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/gan_keikaku03.pdf

2)

国立がん研究センター. がん検診受診率(国民生活基礎調査による推計値). 国立がん
研 究 セ ン タ ー が ん 情 報 サ ー ビ ス 「 が ん 登 録 ・ 統 計 」 2019.
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/screening/screening.html

3)

OECD. OECD Reviews of Public Health: Japan A HEALTHIER TOMORROW.2019

4)

Vainio H, Bianchini(ed.). Breast Cancer Screening. IARC Handbooks of Cancer Prevention
1