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病院薬剤師確保の取組み(修学資金貸与等)の手引き(Ver2.1) (2 ページ)

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出典情報 病院薬剤師確保の取組み(修学資金貸与等)の手引き(Ver2.1)(10/23)《日本病院薬剤師会》
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<はじめに>
近年、薬剤師の地域偏在は深刻な状況となっている。地域によっては、薬剤師の確保が極めて困難な状況が続
いており、医療法で定められた人員配置基準を満たしていない医療機関も少なくない。そのため、薬剤師に求め
られる業務が、対物から対人中心の業務にシフトしている現状においても、病棟薬剤業務を実施できず、日々の
調剤業務に苦慮している医療機関も存在している。また、医療従事者の働き方改革が実施され、薬剤師にも医薬
品業務全般の効率化やタスク・シフト/シェアの実践も求められている。加えて、ICT の利活用を推進することで、
オンライン診療・服薬指導、電子処方箋等、国が主導する形で医療データ情報基盤も整いつつあり、患者・地域
医療への関わり方も変革している。我々薬剤師はこれらを実践しなくてはならないが、地域偏在による人員不足
により、実施可能な業務の格差にもつながっている。そこで、本会では、薬剤師の地域偏在の解消に向けて、理
事会、総会、地域連絡協議会等で議論を重ねるとともに、厚生労働省等への働きかけを進めてきた。しかしなが
ら、医療機関の地域・病床規模・医療機能に関わらず、薬剤師不足は解消しておらず、今後、調剤、病棟薬剤業
務の充実を図り、医薬品の適正使用を推進し、業務拡大に取り組むためにも薬剤師の確保が喫緊の課題である。
厚生労働省が2023年3月に公表した都道府県ごとの薬剤師の偏在指標では、福井県、青森県、富山県などで特に
薬剤師が不足していることが報告された。それに加え、業態別の偏在も大きく、病院薬剤師が充足している都道
府県は1県もないことが示された。今後は、2次医療圏における薬剤師の充足実態を把握し、その結果を踏まえた
対応策の検討が必要となる。また、薬剤師の地域偏在の要因として考えられるのは、薬学生の奨学金の利用と病
院・薬局間の給与水準の格差といわれている。令和3~4年度厚生労働行政推進調査事業「地域における効果的な
薬剤師確保の取組に関する調査研究」によると、薬学生(薬学5・6年生)のうち、約35%が奨学金を利用してい
ると報告された。また、平均の返済総額は650万円であり、1000万円以上と回答した学生も一定数いた。さらに、
病院・薬局の初任給額・年代別年収の調査結果においては、20~30代では病院薬剤師の方が薬局薬剤師より給与
水準が低いことも報告された。このように、将来の奨学金返済から、給料のより高い薬局への就職を考える学生
が多い現状が考えられる。
さて、令和 5年 3月発出の医政局長通知においては、薬剤師の従事先には業態の偏在や地域偏在があり、特に病
院薬剤師不足の解消が喫緊の課題となっていることを踏まえ、必要な薬剤師の確保を図るため、薬剤師の就労状
況を把握し、地域医療介護総合確保基金(修学資金貸与、医療機関への薬剤師派遣等)の積極的な活用を含め、
地域の実情に応じた薬剤師の確保策について、本医療計画に具体的に記載することが求められた。その確保策の
検討及び実施に当たっては、都道府県の薬務主管課及び医務主管課、都道府県薬剤師会とも連携の上取り組むこ
ととしている。この地域医療介護総合確保基金(医療分)は、平成 26 年度より、「医療従事者等の確保・養成の
ための事業」の一つとして利用可能とされてきたが、これまで、薬剤師の確保策に利用されている事例はほとん
どない。そのため、令和 3 年 2 月付け「地域医療介護総合確保基金(医療分)に係る標準事業例の取扱いについて」
の通知により、「薬剤師修学資金貸与事業を行うために必要な経費(勤務地、勤務期間等に条件あり)として使
用可能と明示された。さらに、令和 3 年 12 月付け「地域医療介護総合確保基金を活用した薬剤師修学資金貸与事
業の取扱いについて」の通知により、修学資金の返済義務の免除、就業先の要件や研修プログラムなど具体的取
扱いの詳細の内容が提示された。
本会では、令和5年 1月に、都道府県病院薬剤師会に奨学金・返還等助成制度の実施状況についてアンケート調
査を行った。その結果、奨学金・返還等助成制度の実施状況について、現状を把握していない都道府県病院薬剤
師会は、19都道府県と40%を超えていた。また、今後、奨学金・返還等助成制度の創設予定があるのは、2都道府
県のみであり、予定なしが 23 都道府県、未定が 22 都道府県であった。また、都道府県担当部署(医療政策課、薬
務室等)から地域医療介護総合確保基金の相談があったのは、10 都道府県にとどまっていた。今後、都道府県の
薬務主管課及び医務主管課等と連携の上、本基金を利用した修学資金貸与事業に取り組んでいただきたい。なお、

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