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腸内細菌は樹状細胞を介して腸から離れたがんの免疫環境に影響する 免疫チェックポイント阻害薬の作用に関与する新たな腸内細菌を同定 (7 ページ)

公開元URL https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2025/0715/index.html
出典情報 国立がん研究センター プレスリリース(7/15)《国立がん研究センター》
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節、腫瘍内)の解析により評価しました。その結果、YB328 株で治療したマウスにおいて、粘膜固有層
(図 5a)、パイエル板(図 5b)、所属リンパ節(draining lymph node: dLN)(図 5c)、および腫瘍内(図 5d)
で、CD103 陽性樹状細胞の浸潤が有意に増加していることが確認され、各組織において CD103 陰性
のミエロイド細胞の増加は認められませんでした。さらに、経口投与された YB328 株が、腸とは離れた
腫瘍や所属リンパ節で CD103 陽性樹状細胞を増加させた理由を視覚的に解明するため、細胞の蛍光
色が局所的な UV 照射により緑(G)から赤(R)に変わる Kikume GR マウスを用いた検証を実施しまし
た(図 5e)。マウスに麻酔下で手術を行い、腸だけに UV 照射した後、従来通り YB328 株を経口投与し
ました。その後、腫瘍治療効果を評価したところ、緑から赤に変化した CD103 陽性樹状細胞(KikR⁺)が
所属リンパ節(図 5f, g)および腫瘍内(図 5h)で有意に増加していることが確認されました。
これらの知見は、YB328 株が腸内で活性化された CD103 陽性樹状細胞を誘導し、これらの細胞がリ
ンパ組織や腫瘍部位へと移動することで、抗腫瘍免疫応答を強化していることを明確に示しています。

6.マウスで得られた知見をヒト腫瘍組織で検証:YB328 株の保菌率と免疫細胞浸潤の関連を確認
最後に、マウスモデルを用いた機能解析で得られた知見を、実際のがん患者由来の臨床検体で検証
することを目的に、今回のコホートに含まれる治療開始前の腫瘍組織(FFPE 標本)を対象として、多重
免疫蛍光染色による解析を行いました。マウスにおいて抗腫瘍免疫の誘導に重要とされた CD103 陽
性樹状細胞に対応する細胞は、ヒト組織では CLEC9A 陽性かつ IRF8 陽性の樹状細胞として定義され
ました。このヒト腫瘍組織に対して、腸内細菌叢のプロファイル、腫瘍内に浸潤する PD-1 陽性 CD8 陽
性 T 細胞、および CLEC9A 陽性 IRF8 陽性樹状細胞の分布について統合的な解析を実施したところ、
YB328 株の保菌率が高い患者さんでは、PD-1 陽性 CD8 陽性 T 細胞および CLEC9A 陽性 IRF8 陽
性樹状細胞の腫瘍内浸潤が有意に多いことが明らかとなりました(図 6a, b)。
これらの結果は、YB328 株が腸内で樹状細胞を活性化し、それにより誘導される抗腫瘍免疫応答が
実際のヒト腫瘍組織でも再現されていること示しています。
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