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【資料2】田中参考人提出資料 (21 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58633.html
出典情報 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会(第7回 6/9)《厚生労働省》
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精神疾患を有する患者に対する腎代替療法等に関する調査研究_概要
背景

わが国では高齢化に伴い慢性腎臓病(CKD)およびRRTを必要とする患者の増加が見込まれており、精神疾患を有する患者においても例外ではない。
しかし、精神疾患患者に対するRRTの提供実態や支援体制についての系統的な調査は限られており、現場では個別対応に頼らざるを得ない状況が続いている。

目的

精神疾患を有する患者に対する腎代替療法(RenalReplacementTherapy:RRT)、特に血液透析の提供体制と課題を明らかにし、今後の医療・福祉政策に資する提言を行う。

課題と提言

結果
• 精神科医療機関における透析導入や維持透析の実施
→主としていわゆる総合病院精神科
• 単科精神科病院での透析実施は極めて困難
• 通院や身体科医療機関での入院が困難な精神疾患
患者に対して継続的治療の提供体制が乏しい
• それが故に透析そのものが断念される可能性
• 診療報酬制度上の課題
• 付き添い・送迎等に係る人員確保の困難さ
• 精神疾患を有する患者への透析導入の課題
• 精神症状の影響等による意思決定能力の変動
• 情報提供体制不足
• 臨床倫理支援体制の未整備
→患者本人の意志を尊重した治療選択が困難となる
可能性
• 維持透析を必要とする精神疾患患者の移住先・通院
先の確保困難
→維持透析可能な精神科病院への長期入院の可能性
慢性腎臓病を併存する精神疾患患者数と慢性透析患者推計

実態把握
精神疾患患者の中で腎代替療法を必要とする者の数は正確
に把握されておらず、今後の高齢化を踏まえれば、推計の精
緻化が急務である。現行の統計調査では限界があることから、
匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)などを用い
た包括的な実態把握が求められる。

医療提供体制
単科精神科病院では透析導入・維持ともに困難である状況
が浮き彫りとなった。精神科医療機関と腎臓内科との連携体
制を強化し、遠隔診療や往診を含む多様な診療形態の活用
を促進することが必要である。また、透析を必要とする精神疾
患患者が地域生活を継続するためには、透析医療機関への
送迎体制や精神症状再燃時の診療・支援体制、居住・介護
支援との連携が不可欠であることが示唆された。

国及び地方公共団体の役割

意思決定支援
透析治療の開始・中止に関する判断は生命に直結し、かつ精
神症状による意思能力の変動が生じうることを考慮すると、臨
床倫理支援体制の整備や、精神疾患患者の身体疾患治療
に関する意思決定支援のあり方を学際的に検討することが
必要であると考えられた。加えて、精神科病院ではRRTに関す
る適切な情報提供を行うこと自体が困難であることから、患者
の自己決定を支える情報提供のあり方についても検討するこ
とが望まれる。

多職種による支援
多職種による支援の必要性も明らかになった。身体疾患への
対応力を持つ看護師の育成、精神保健福祉士・社会福祉
士・薬剤師・公認心理師の活用、さらには介護・福祉職との
協働が重要である。特に、精神身体合併症に対応可能な人
材育成は中長期的な課題として検討を重ねていくことが求めら
れる。

個別の医療機関の努力に委ねるだけでは限界がある。「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指
針」において、精神科と身体科の連携を支援・促進する制度的枠組みの構築などについての指針を示すことが望ましいと考えられ
る。また、第8次医療計画の見直し、地域医療構想の検討の際にも、身体疾患に対する医療と精神疾患に対する医療の双方を
必要とする患者への対応、特に継続的に高度な医療が必要とされるような状況について議論を深めるとともに、自治体主導によ
る連携体制の確保や、透析受け入れ可能な精神病床の確保についても検討していくことが求められる。さらに、精神科病院におけ
る透析医療の実施が困難な要因の一つとして、診療報酬上の不利益が繰り返し指摘されていることを踏まえ、診療報酬の見直し
についての検討も重要である。
令和6年度 障害者総合支援事業費補助金(障害者総合福祉推進事業)実施事業者:国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 地域保健法制度研究部

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