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参考資料4:ヘルシンキ宣言 (1 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_57354.html
出典情報 生命科学・医学系研究等における個人情報の取扱い等に関する合同会議(第10回 4/24)《厚生労働省》
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世界医師会ヘルシンキ宣言の2024年改訂

(※括弧内はパラグラフ番号)

◆主な改訂のポイント
1)被験者から「参加者」へ:これまでの「被験者」(human subject)の表記が「参加者」(participants)に変更
された(1)。参加する人の主体性や役割に注目した変更とされる。
2)緊急事態でも原則は大事:公衆衛生上の緊急事態においても,この宣言の諸原則は重要であり続けるとする記
載が加えられた(8)。コロナ禍で展開した一部の研究への懸念を受けた加筆とされる。
3)研究に伴う不平等への警戒:研究参加者は,一種のボランティアとしてリスクを引き受けることになる。誰が
参加し,害はどこまで許容されるのか。参加者も恩恵を得る手立てはないか。研究には,こうした害と恩恵の非
対称性を巡る課題が伴う。今回の改訂で,研究に絡む「構造的な不平等」(structural inequities)への対応を求め
る記載が加わった。研究者は,特定の人々に過度の負担がかからないよう,適切な負担配置と恩恵の再配分を考
えることが求められる(6)。
4)弱者の「保護」とは:参加者の保護は,より多くの配慮を要する人々(弱者)を対象とした研究の際に特に課
題となる(例:判断能力,立場の弱さなど)。今回の改訂では,「弱さ」にも多様な側面があり,固定的な基準
のみではなく,個人が属する集団や構造的な弱さにも注目すべきとされた(19)。研究者は,強引な組み入れの
害への懸念と,「保護」の名の下に研究から過度に遠ざける害の両面に注意が必要である。
5)研究に参加する側の視点を知る:参加者側の希望や価値観を計画立案や配慮に生かすため,研究者には参加者
やそのコミュニティの人々による「意味のある関与」の企画と実践が求められる(6)。
6)医学研究の情報・試料リソースの確保と管理:AI研究やバイオバンクなど,人に由来する情報や試料の蓄積を
生かした研究が増加している。本人意思の尊重に加え,個人再識別への警戒など,必要な配慮がより詳細に設定
された。また,倫理審査の役割明確化,同じく世界医師会による「台北宣言」(ヘルスデータベースとバイオバ
ンクについての倫理的考察に関する世界医師会の台北宣言,2016年)の遵守など,運営体制に関する記載も追記
された(32)。
7)未確立医療に関する要件の精緻化:従来の記載(専門家の助言や他に有効な手段がない場合に限るなど)に加
え,既存の臨床試験への影響回避など,要件が改めて整理された(37)。
このほか,チームや関連組織の主体的役割(2),倫理審査委員会の運営体制の充実(23),生態系・環境への
負荷軽減(11)に関する記載も増えた。
出典:井上 悠輔:京都大学医学研究科・社会健康医学系専攻(医療倫理学)教授(2024.12.10 医学界新聞:第3568号より)