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閉経前までの成人女性における低体重や低栄養による健康課題-新たな症候群の確立について- (5 ページ)

公開元URL https://www.jasso.or.jp/data/Introduction/pdf/academic-information_statement_20250416.pdf
出典情報 閉経前までの成人女性における低体重や低栄養による健康課題-新たな症候群の確立について-(4/17)《日本肥満学会》
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3. 新たな症候群の概念
3.1 疾患概念確立の必要性と注意点
本ワーキンググループの目的は、閉経前までの成人女性における低体重や低栄養に関連す
る健康障害を体系的に整理し、新たな概念(症候群)として提示することである。この症候
群の概念の構築にあたり、メタボリックシンドロームの考え方を参考にした。
具体的には、メタボリックシンドロームでは、高血圧・高血糖・脂質代謝異常といった個々
の疾患は氷山の一角であり、その背景にある内臓肥満が根本的な病態であることを、様々な
エビデンスを元に概念化した。このような概念の構築により、介入するポイントが明確にな
っただけではなく、誰もが広く病態を理解しやすくなり、個人レベルでの認識が深まること
で、適切な行動変容を促すきっかけとなった。同様に、今回の疾患概念提唱においても、貧
血、月経周期異常、倦怠感といった表面的な指標のみではなく、低体重・低栄養という根本
的な病態に着目することで、より包括的な健康リスクの評価と介入の枠組みを構築する。こ
れにより、健診や診療の場で活用されるだけでなく、広く一般に認識されることが期待され
る。一方で、低体重に関連する疾患や症状は、必ずしも低体重の人のみ認められるものでは
なく、栄養摂取の不足によって生じる場合もある。そのため、疾患概念に低体重を必須とし
た場合には、
「痩せていなければ問題はない」、という誤解を与える可能性もあり、疾患概念
の設定には慎重な検討が必要と考えられる。

3.2 症候群の名称案とその概念・定義
このような背景から、本ワーキンググループでは、女性における低体重・低栄養と健康障害
の関連を示す症候群の名称として、Female Underweight/Undernutrition Syndrome(FUS)
(女性の低体重/低栄養症候群)を提案する。18 歳以上で閉経前までの成人女性を対象とし
た場合、FUS に含まれる主な疾患や状態は以下の通りである。
低栄養・体組成の異常


BMI < 18.5 kg/m²



低筋肉量・筋力低下



栄養素不足(ビタミン D・葉酸・亜鉛・鉄・カルシウムなど)



貧血(鉄欠乏性貧血など)

性ホルモンの異常


月経周期異常(視床下部性無月経・希発月経)

骨代謝の異常


低骨密度(骨粗鬆症または骨減少症)

その他の代謝異常


耐糖能異常