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閉経前までの成人女性における低体重や低栄養による健康課題-新たな症候群の確立について- (2 ページ)
出典
公開元URL | https://www.jasso.or.jp/data/Introduction/pdf/academic-information_statement_20250416.pdf |
出典情報 | 閉経前までの成人女性における低体重や低栄養による健康課題-新たな症候群の確立について-(4/17)《日本肥満学会》 |
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1. はじめに
日本の 20 代女性では 2 割前後が低体重(痩せ)
(体格指数 (BMI) < 18.5kg/m2)であり、
先進国のなかでも特に高率である(1) 。低体重や低栄養は骨量の低下や月経周期異常をはじ
めとする女性の健康に関わるさまざまな障害と関連していることが知られている。我が国
で低体重(痩せ)女性が多い背景として、ソーシャルネットワークサービス(SNS)やファ
ッション誌などを通じた「痩せ=美」という価値観が深く浸透し、それに起因する強い痩身
願望があると考えられる。近年では糖尿病や肥満症の治療薬である GLP-1 受容体作動薬の
適応外使用が「安易な痩身法」として紹介され、社会問題となっている(2)。
しかしながら、従来の医療制度や公衆衛生施策においては、肥満への対策が重視されてお
り、低体重や低栄養に対する系統的アプローチは不十分であった。その原因として、第一に、
低体重や低栄養と疾患の関係性を表すような疾患概念が存在しないことが挙げられる。ま
た、この問題を解決するためには、個人の意識や行動に焦点を当てるだけではなく、痩身願
望を生み出す社会構造へのアプローチが不可欠である。
このような背景から、日本肥満学会は、日本骨粗鬆症学会、日本産科婦人科学会、日本小
児内分泌学会、日本女性医学学会、日本心理学会と協同してワーキンググループを立ち上げ
た。本ワーキンググループでは、骨量の低下や月経周期異常、体調不良を伴う低体重や低栄
養の状態を、新たな症候群として位置付け、診断基準や予防指針の整備を目的とすると同時
に、本課題の解決方法についても議論を進めている。本ステートメントでは、閉経前までの
成人女性を中心とした低体重の増加の問題点を整理し、新たな疾患概念の名称・定義・ステ
ィグマ対策を示すとともに、その改善策を論じる。
2. 背景
2.1 日本の女性における低体重者の現状とライフコースへの影響
日本人女性における低体重は、特に 20 代で顕著であり、先進国の中でもその割合が特に
高いことが知られている。低体重の割合は 1980 年頃に 10%を越える程度であったが、以後
増加し、1990 年代以降は 20 代の 20~25%程度が低体重に該当する状態が続いている(1)。
様々な研究から、日本人女性における肥満認知や理想体重の設定が過度に低く、実際にやせ
願望を強くもつ傾向があることが明らかになっている。例えば、低体重の若年女性において、
肥満だと感じる体格が BMI 20.5 kg/m2 と極めて低く、体重に対する厳格な認知やボディイ
メージの歪みがあることが示唆されている(3)。こうした低体重は、意図的な摂食制限によ
り生じる場合がある一方で、低体重者の約 40%にはダイエット経験がなく、体質的に痩せ
ている人も多く含まれている可能性も明らかとなっている(3)。
若年期における過度の低体重や低栄養は、骨の成長や生殖機能の発達といった重要な身
体機能に加え、その後のライフコース全体に影響を及ぼす可能性がある。たとえば、最大骨
日本の 20 代女性では 2 割前後が低体重(痩せ)
(体格指数 (BMI) < 18.5kg/m2)であり、
先進国のなかでも特に高率である(1) 。低体重や低栄養は骨量の低下や月経周期異常をはじ
めとする女性の健康に関わるさまざまな障害と関連していることが知られている。我が国
で低体重(痩せ)女性が多い背景として、ソーシャルネットワークサービス(SNS)やファ
ッション誌などを通じた「痩せ=美」という価値観が深く浸透し、それに起因する強い痩身
願望があると考えられる。近年では糖尿病や肥満症の治療薬である GLP-1 受容体作動薬の
適応外使用が「安易な痩身法」として紹介され、社会問題となっている(2)。
しかしながら、従来の医療制度や公衆衛生施策においては、肥満への対策が重視されてお
り、低体重や低栄養に対する系統的アプローチは不十分であった。その原因として、第一に、
低体重や低栄養と疾患の関係性を表すような疾患概念が存在しないことが挙げられる。ま
た、この問題を解決するためには、個人の意識や行動に焦点を当てるだけではなく、痩身願
望を生み出す社会構造へのアプローチが不可欠である。
このような背景から、日本肥満学会は、日本骨粗鬆症学会、日本産科婦人科学会、日本小
児内分泌学会、日本女性医学学会、日本心理学会と協同してワーキンググループを立ち上げ
た。本ワーキンググループでは、骨量の低下や月経周期異常、体調不良を伴う低体重や低栄
養の状態を、新たな症候群として位置付け、診断基準や予防指針の整備を目的とすると同時
に、本課題の解決方法についても議論を進めている。本ステートメントでは、閉経前までの
成人女性を中心とした低体重の増加の問題点を整理し、新たな疾患概念の名称・定義・ステ
ィグマ対策を示すとともに、その改善策を論じる。
2. 背景
2.1 日本の女性における低体重者の現状とライフコースへの影響
日本人女性における低体重は、特に 20 代で顕著であり、先進国の中でもその割合が特に
高いことが知られている。低体重の割合は 1980 年頃に 10%を越える程度であったが、以後
増加し、1990 年代以降は 20 代の 20~25%程度が低体重に該当する状態が続いている(1)。
様々な研究から、日本人女性における肥満認知や理想体重の設定が過度に低く、実際にやせ
願望を強くもつ傾向があることが明らかになっている。例えば、低体重の若年女性において、
肥満だと感じる体格が BMI 20.5 kg/m2 と極めて低く、体重に対する厳格な認知やボディイ
メージの歪みがあることが示唆されている(3)。こうした低体重は、意図的な摂食制限によ
り生じる場合がある一方で、低体重者の約 40%にはダイエット経験がなく、体質的に痩せ
ている人も多く含まれている可能性も明らかとなっている(3)。
若年期における過度の低体重や低栄養は、骨の成長や生殖機能の発達といった重要な身
体機能に加え、その後のライフコース全体に影響を及ぼす可能性がある。たとえば、最大骨