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閉経前までの成人女性における低体重や低栄養による健康課題-新たな症候群の確立について- (3 ページ)

公開元URL https://www.jasso.or.jp/data/Introduction/pdf/academic-information_statement_20250416.pdf
出典情報 閉経前までの成人女性における低体重や低栄養による健康課題-新たな症候群の確立について-(4/17)《日本肥満学会》
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量獲得期における骨形成の阻害は、将来の骨粗鬆症リスク上昇につながる。また、極端な体
重減少や低栄養は月経周期異常や不妊を引き起こす可能性がある。加えて、栄養欠乏が持続
すれば、微量元素やビタミン不足による多様な健康障害や、代謝異常を引き起こす。さらに、
高齢に至らなくとも筋力・筋量が減少し、将来、サルコペニアへの進展リスクが増加する恐
れもある。これらの問題が若年期に生じることは、中長期的な生活の質(QOL)の低下や
老年期のフレイルリスク増大を含め、人生の各ステージにおける健康に影響を及ぼすこと
に加え、次世代の健康をも損なう可能性がある。そのため、早期からの適切なアプローチと
予防が不可欠である。

2.2 低体重及び低栄養による健康リスクや症状
2.2.1

骨量低下および骨粗鬆症

若年期は骨密度ピークを獲得する最重要期である、しかし、低栄養やエストロゲンの低下、
低体重による物理的な過重負荷の低下が骨形成を阻害し、20 代における骨減少をもたらし、
将来的な骨粗鬆症リスクを高めると考えられる(4)。
2.2.2

月経周期異常、妊孕性および児の健康リスク

低栄養や極端な体重減少は視床下部−下垂体−卵巣系に影響し、月経不順や排卵障害を
引き起こす(5)。長期的には不妊や妊娠合併症リスクの上昇が懸念される。低体重に伴う希
発月経や視床下部性無月経は、妊娠前の体格や栄養状態の不良と相まって、切迫早産や低出
生体重児の増加など児の健康にも影響を及ぼす可能性が示唆されている(6)。
近年注目されている DOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)の概念において
も、妊娠中の母体の栄養状態が児のライフコース全体の健康に影響を及ぼすことが指摘さ
れている。この観点からも、若年女性の低体重や低栄養は、将来的な母体および児の健康リ
スクを高める要因となる可能性がある(7)。
2.2.3

微量元素やビタミン不足による健康障害

低栄養の場合、複数のビタミン・ミネラルの不足が生じやすく、さまざまな健康障害を引き
起こす可能性がある(8)。鉄、葉酸、ビタミン B12 の不足は貧血を引き起こし(9)、亜鉛欠乏
は創傷治癒の遅延や免疫機能の低下、味覚異常をもたらす(10)。さらに、ビタミン D やカ
ルシウムの不足は骨密度の低下を招き、骨粗鬆症や骨折のリスクを高める(11)。
2.2.4

代謝異常

低体重は糖尿病発症リスクとして知られ、日本人若年女性の低体重では耐糖能異常のリス
クが高いことが最近の研究で明らかとなっている(12; 13)。また、エネルギー制限により、
体の代謝を調整する甲状腺ホルモンの一種であるトリヨードサイロニン(T3)が減少する