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資料2 矢田構成員提出資料 (6 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_57904.html |
出典情報 | 有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会(第3回 5/19)《厚生労働省》 |
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「本件窓及び本件ストッパー自体に不備はなく、亡Bが本件窓から転落することを予見
できたとはいえない本件において、本件事故時に本件ストッパーが使用されていなかっ
たからといって、本件窓が通常有すべき安全性を欠いていたということはできない。
」
③検討
❶本判決のポイント
・認知症高齢者による転落、転倒等の事故についての裁判例も少なくない。そのため、
認知症高齢者に帰宅願望があり施設からの外出を試みて窓等から転落する一般的な
危険は、高齢者施設側に広く認識されていると思われる。とはいえ、転落等の事故を
防止する必要性があると同時に、高齢者の行動を過度に制約することも相当でない
とされているため、症状の内容、程度等の具体的状況に即した慎重な対応が重要。
・仮に入居者(高齢者側)が住まいの種類の違いを意識・理解せずに入居したとしても、
ホーム側が負う安全配慮義務は、住まいの種類や契約上のサービス提供義務の内容
に応じて差異が生じるものという判断が示されている。特に、本件では、Y らそれぞれ
の安全配慮義務の範囲をその各契約内容を参考に検討し、Y らの提携関係を一体的に
捉えて介護付き有料老人ホーム等と同視することは相当でないとしている。
❷【参考】従来の判例の紹介
【窓からの転落事例:東京高判平成 28 年 3 月 23 日:事業者の責任を一部認容】
(事案の概要)
認知症状が進んだ A(当時 85 歳)は、Y(被告、被控訴人)の開設する介護老健施設(認知症
専門棟)に入所(ショートステイ)していたが、Y 施設の 2 階にある食堂の窓から外に出て、雨
どい伝いに降りようとして地面から落下し、搬送先の病院で死亡した。そこで、A の子である X
ら(原告、控訴人)は、Y 施設職員には、帰宅願望の強い A が窓から抜け出すことを予見すべき
義務があったこと、また、Y 施設の食堂の窓には、ストッパーが設置されていたものの、本件窓
からの転落防止対策としては何ら有効ではなかったとして A の死亡は Y 施設における安全配慮
義務違反、又は食堂の窓に係る瑕疵によるものと主張し、債務不履行又は不法行為に基づく損害
賠償を請求した。
一審は、A の帰宅願望を認識していたことをもって直ちに 2 階の窓のストッパーを壊して施設
を抜け出すことまでは予見できないとし、安全配慮義務を否定した。
(判旨)一部認容
これに対し、本判決でも安全配慮義務は否定したが、工作物責任を肯定。すなわち、認知症に
関する一般的知見に照らせば、認知症患者の介護施設においては、利用者が 2 階以上の窓から
建物の外へ出ようとすることもあり得るものとして、「施設の設置又は保存において適切な措置
を講ずべきである」
。
具体的には、本件食堂の窓は、ストッパーにより最大 150 ㎜程度しか開放されないようにな
っていたが、「本件ストッパーは、本件窓をコツコツと特に大きな力によることなく当てること
により容易にずらすことができ、ごく短時間で大人が通り抜けられる程度のすき間が開けられ
る」ところ、このようなずらし方は、「帰宅願望を有する認知症患者が、帰宅願望に基づき本件
ストッパーの設置された窓を無理に開放しようと考えた際、思いつき得る方法と認められる。」
また、本件ストッパーの使用方法(中間止め)が、製造業者が想定した使用方法ではないと認め
られることから、窓の開放制限措置として不適切で、通常有すべき安全性を欠いていたものと認
めるのが相当である。
土地の工作物責任は、通常予想される危険を前提としたときに当該工作物が備えるべき安全性
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できたとはいえない本件において、本件事故時に本件ストッパーが使用されていなかっ
たからといって、本件窓が通常有すべき安全性を欠いていたということはできない。
」
③検討
❶本判決のポイント
・認知症高齢者による転落、転倒等の事故についての裁判例も少なくない。そのため、
認知症高齢者に帰宅願望があり施設からの外出を試みて窓等から転落する一般的な
危険は、高齢者施設側に広く認識されていると思われる。とはいえ、転落等の事故を
防止する必要性があると同時に、高齢者の行動を過度に制約することも相当でない
とされているため、症状の内容、程度等の具体的状況に即した慎重な対応が重要。
・仮に入居者(高齢者側)が住まいの種類の違いを意識・理解せずに入居したとしても、
ホーム側が負う安全配慮義務は、住まいの種類や契約上のサービス提供義務の内容
に応じて差異が生じるものという判断が示されている。特に、本件では、Y らそれぞれ
の安全配慮義務の範囲をその各契約内容を参考に検討し、Y らの提携関係を一体的に
捉えて介護付き有料老人ホーム等と同視することは相当でないとしている。
❷【参考】従来の判例の紹介
【窓からの転落事例:東京高判平成 28 年 3 月 23 日:事業者の責任を一部認容】
(事案の概要)
認知症状が進んだ A(当時 85 歳)は、Y(被告、被控訴人)の開設する介護老健施設(認知症
専門棟)に入所(ショートステイ)していたが、Y 施設の 2 階にある食堂の窓から外に出て、雨
どい伝いに降りようとして地面から落下し、搬送先の病院で死亡した。そこで、A の子である X
ら(原告、控訴人)は、Y 施設職員には、帰宅願望の強い A が窓から抜け出すことを予見すべき
義務があったこと、また、Y 施設の食堂の窓には、ストッパーが設置されていたものの、本件窓
からの転落防止対策としては何ら有効ではなかったとして A の死亡は Y 施設における安全配慮
義務違反、又は食堂の窓に係る瑕疵によるものと主張し、債務不履行又は不法行為に基づく損害
賠償を請求した。
一審は、A の帰宅願望を認識していたことをもって直ちに 2 階の窓のストッパーを壊して施設
を抜け出すことまでは予見できないとし、安全配慮義務を否定した。
(判旨)一部認容
これに対し、本判決でも安全配慮義務は否定したが、工作物責任を肯定。すなわち、認知症に
関する一般的知見に照らせば、認知症患者の介護施設においては、利用者が 2 階以上の窓から
建物の外へ出ようとすることもあり得るものとして、「施設の設置又は保存において適切な措置
を講ずべきである」
。
具体的には、本件食堂の窓は、ストッパーにより最大 150 ㎜程度しか開放されないようにな
っていたが、「本件ストッパーは、本件窓をコツコツと特に大きな力によることなく当てること
により容易にずらすことができ、ごく短時間で大人が通り抜けられる程度のすき間が開けられ
る」ところ、このようなずらし方は、「帰宅願望を有する認知症患者が、帰宅願望に基づき本件
ストッパーの設置された窓を無理に開放しようと考えた際、思いつき得る方法と認められる。」
また、本件ストッパーの使用方法(中間止め)が、製造業者が想定した使用方法ではないと認め
られることから、窓の開放制限措置として不適切で、通常有すべき安全性を欠いていたものと認
めるのが相当である。
土地の工作物責任は、通常予想される危険を前提としたときに当該工作物が備えるべき安全性
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