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難病「アミロイドーシス」に光を。-アミロイドの無毒化による治療効果を初めて実証- (3 ページ)
出典
公開元URL | https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/z0111_00087.html |
出典情報 | 難病「アミロイドーシス」に光を。-アミロイドの無毒化による治療効果を初めて実証-(8/7)《東京大学ほか》 |
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トランスサイレチンアミロイドーシス(ATTR)は、体内にあるトランスサイレチン(TTR:
注 3)というタンパク質がアミロイドを形成することで発症する難治性疾患です。本来、TTR
は甲状腺ホルモンやビタミン A を運ぶ役割を担うタンパク質として私たちの体に存在していま
すが、その構造がなんらかの理由で変性(不安定化)すると、毒性のある形に姿を変えてしま
うことがあります。こうしてできたアミロイドが心臓や腎臓、末梢神経系などに蓄積していく
と、全身の臓器を徐々にむしばみ、手足のしびれや筋力の低下、心不全など生活の質を大きく
損なう症状が現れるようになります。この変性のメカニズムは完全には解明されていませんが、
遺伝的な要因や加齢が関与するとされています。特に、80 歳以上の高齢者の約 4 人に 1 人に影
響を及ぼすとも言われており、世界的な高齢化の進行とともに、その脅威は増加の一途をたど
っているといえます。一方、現在の治療法の多くは「病気の進行を止める」ことが中心で、一
度蓄積したアミロイドの毒性を“消す”方法はありませんでした。そのため、一度発症すると
根本的な治療が難しく、有効な治療薬がないまま命を落とす患者も少なくありません。
未だ救えない命を救うために、今回、研究チームはこの難題に対し“光”と“触媒”(注 4)
を使った独自のアプローチにより、アミロイドそのものを無毒化するという革新的な戦略で挑
みました。開発された触媒は、小さな分子でありながらアミロイド特有の構造に対して選択的
に結合し、生体透過性の高い橙色光を照射することで空気中の酸素(O2)を使って、アミロイ
ドの中のヒスチジンやメチオニンというアミノ酸に酸素原子(元素記号:O)を導入します
(図 1)。
図 1:アミロイドの触媒的光酸素化反応
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注 3)というタンパク質がアミロイドを形成することで発症する難治性疾患です。本来、TTR
は甲状腺ホルモンやビタミン A を運ぶ役割を担うタンパク質として私たちの体に存在していま
すが、その構造がなんらかの理由で変性(不安定化)すると、毒性のある形に姿を変えてしま
うことがあります。こうしてできたアミロイドが心臓や腎臓、末梢神経系などに蓄積していく
と、全身の臓器を徐々にむしばみ、手足のしびれや筋力の低下、心不全など生活の質を大きく
損なう症状が現れるようになります。この変性のメカニズムは完全には解明されていませんが、
遺伝的な要因や加齢が関与するとされています。特に、80 歳以上の高齢者の約 4 人に 1 人に影
響を及ぼすとも言われており、世界的な高齢化の進行とともに、その脅威は増加の一途をたど
っているといえます。一方、現在の治療法の多くは「病気の進行を止める」ことが中心で、一
度蓄積したアミロイドの毒性を“消す”方法はありませんでした。そのため、一度発症すると
根本的な治療が難しく、有効な治療薬がないまま命を落とす患者も少なくありません。
未だ救えない命を救うために、今回、研究チームはこの難題に対し“光”と“触媒”(注 4)
を使った独自のアプローチにより、アミロイドそのものを無毒化するという革新的な戦略で挑
みました。開発された触媒は、小さな分子でありながらアミロイド特有の構造に対して選択的
に結合し、生体透過性の高い橙色光を照射することで空気中の酸素(O2)を使って、アミロイ
ドの中のヒスチジンやメチオニンというアミノ酸に酸素原子(元素記号:O)を導入します
(図 1)。
図 1:アミロイドの触媒的光酸素化反応
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