よむ、つかう、まなぶ。

MC plus(エムシープラス)は、診療報酬・介護報酬改定関連のニュース、

資料、研修などをパッケージした総合メディアです。


感染症週報 2025年第26週(6月23日-6月29日) (11 ページ)

公開元URL https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/jp/idwr/2025/index.html
出典情報 感染症週報 2025年第26週(6月23日-6月29日)(7/11)《国立感染症研究所》
低解像度画像をダウンロード

資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。

Infectious Diseases Weekly Report Japan

2025年 第26週
(6月23日〜 6月29日)
:通巻第27巻 第26号

注目すべき感染症
◆伝染性紅斑
伝染性紅斑(erythema infectiosum)は、ヒトパルボウイルスB19(HPV-B19)を原因病原体
とし、小児を中心に発症する流行性の発疹性疾患である。主に飛沫感染もしくは接触感染で
伝播し、保育施設や学校等での集団感染、家庭内での二次感染で広がる。特徴的な症状として
は、10~20日の潜伏期間を経て出現する両頬の境界鮮明な紅斑、続いて四肢にも両側性に網
目状・レース様の発疹がみられる(https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ta/5th-disease/010/5thdisease.html:写真1、2参照)。典型例では両頬がリンゴのように赤くなることから「リンゴ病」
()
と呼称されることもある。紅斑が出現する前に発熱・咽頭痛といった非特異的な感冒様症状が
出現することがあり、その時期に感染性が強いとされているが、紅斑・発疹出現時には他者へ
の感染性はほぼ消失している。本疾患の約4分の1は不顕性感染であり、有症状者も基本的に
は予後良好である。しかし妊娠初期から中期の妊婦がHPV-B19に感染すると、HPV-B19が胎
児に経胎盤感染し、流産や死産、胎児水腫といった重篤な合併症につながることがある。また
鎌状赤血球症などの溶血性貧血患者が同ウイルスに感染すると貧血発作を引き起こすことがあ
る。免疫不全者が感染すると重篤で慢性的な貧血を発症する場合もあり、注意が必要である。
治療法は経過観察・解熱鎮痛剤等による対症療法のみであり、特異的な治療薬やワクチンはな
い。
伝染性紅斑は、感染症発生動向調査では5類感染症小児科定点把握対象疾患として位置づ
けられている。小児科定点医療機関は、医師が当該感染症を疑い、両頬の紅斑および四肢の
レース様の紅斑を認めた患者の性別・年齢群別の症例数を毎週届け出る。なお、報告された
症例数を報告した定点医療機関数で割った値が定点当たり報告数で、これにより感染症の流
行状況を把握する。
伝染性紅斑は1982年よりその発生動向の調査が開始されている。報告数のピークが高く、比
較的大きな流行となったのは、感染症法施行以前では1987年、1992年、1997年、同施行後にお
いては2001年、2007年、2011年、2015年であり、ほぼ4~6年ごとの周期で大きな流行が観察
された。流行年では6~7月(第23~27週)ごろにピークがみられたが近年はそのような季節性が
はっきりしない。2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行前最後の流行年となっ
たのは2019年である。COVID-19流行から2023年までは大きな流行もなく通年的に定点当た
り報告数が0.02未満という低い水準で推移した。2024年も第19週までは低い水準で推移して
いたが、その後に漸増して第46週には定点当たり報告数0.56(患者報告数1,742)となった。そ
の後も増加が続いて第51週は0.98(3,076)となった。2025年に入っても同程度の水準で報告さ
れていたが、第6週以降は0.6前後に減少し、第11週に0.81(2,516)と再び増加した。第20週に
は2.05(4,834)となり、1999年に現行のサーベイランス体制が導入されて以来の最高値を記録
した。第25週には2.53(5,943)とさらに高い水準で推移している(2025年6月25日現在)。なお、
急性呼吸器感染症サーベイランスの開始に伴って2025年第15週に感染症発生動向調査実施要
綱の改定により定点選定基準が変更され、小児科定点数が従来の全国約3,000定点から約
2,000定点とされたことに注意する必要がある。
年齢群別報告数の割合でみると、COVID-19流行以前は3~5歳あるいは6~9歳の割合が高
かった。2020年から2023年のCOVID-19流行期では、全年齢で報告数が減少したが、特に3歳
以上でより大きく減少した(表1)。COVID-19流行後である2024年以降はCOVID-19流行前と
同じ傾向となった。

Ministry of Health, Labour and Welfare / Japan Institute for Health Security, National Institute of Infectious Diseases

11