よむ、つかう、まなぶ。

MC plus(エムシープラス)は、診療報酬・介護報酬改定関連のニュース、

資料、研修などをパッケージした総合メディアです。


2025年7月3日 エムポックス感染の拡大防止へ新たな指標 (3 ページ)

公開元URL https://www.jihs.go.jp/content4/pressrelease/2025/010/20250703_01.pdf
出典情報 国立健康危機管理研究機構 プレスリリース(7/3)《名古屋大学大学院、国立健康危機管理研究機構ほか》
低解像度画像をダウンロード

資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。

Press Release
あることを明らかにしました。また、発症時の血中ウイルス量は、個々人の病変消失時間
と正の相関を持つことも示しました。
本研究の結果は、従来は臨床的所見に基づき判断されてきた病変の進行度を、病変発
症時の血中ウイルス量を用いて定量的・客観的に予測できることを示した重要な報告と
なります。これらの知見により、個別化あるいは層別化された治療戦略や感染症対策に大
きく貢献することが期待されます。
【成果の意義】
エムポックスに関するこれまでの研究では、病変などの症状については定性的もしくは
記述的な調査にとどまり、時間とともに変動する病状の進行・治癒プロセスについて定量
的分析が行われてきませんでした。しかし、分析対象のエムポックス感染者のうち約50%
が、約3-4週間を過ぎても皮膚病変が残存することが本研究により明らかになりました。
本研究は、このような患者が長期間にわたり感染性を保持する可能性が高いことから、他
者への感染リスクを軽減するためには早期発見が極めて重要であると示唆しています。
また、こうした個々の患者や高リスク群に対しては、個別に調整された治療法や隔離の設
計が必要であることを明らかにしています。
さらに、より実践的なエムポックス対応を目指し、本研究では、皮膚病変の症状進行の
ばらつきを個人レベルで考慮し、個人差を明らかにしただけでなく、感染リスクの高い感
染者(病変消失時間が長い症例)を簡便かつ早期に予測できる指標も提案しました。特に、
病変発症時の血中ウイルス量を指標としてこれらの患者を予測できれば、迅速な治療計
画の策定や効果的な自己隔離ルールの構築に大きく寄与することが期待されます。
また、本研究成果はクレード Ia の感染者のデータに基づいていますが、クレード Ib の
感染者においても、同様のデータがあれば皮膚病変の症状進行の予測可能性が評価でき
ます。将来的には、クレードごとの皮膚病変の進行度の違いを明らかにすることで、現在
のエムポックスのパンデミックに対して、より効果的な感染症対策・治療を提案することが
可能になるかもしれません。
本研究は、さまざまな感染症における超早期(未病)状態の推定に適用できる数理科学
理論を開発する研究を推進する2021年度開始のJST ムーンショット型研究開発事業
ムーンショット目標2 「2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる
社会を実現」(JPMJMS2021、JPMJMS2025)、および2023年度開始のJST 戦略
的創造研究推進事業 さきがけ「パンデミックに対してレジリエントな社会・技術基盤の構
築」(JPMJPR23RA)の支援のもとで行われたものです。
【用語説明】
注 1)エムポックス:
1970 年にザイール(現在のコンゴ民主共和国)でヒトでの初めての感染が確認され
た、オルソポックスウイルス属のエムポックスウイルスによる感染症で、中央アフリカ
から西アフリカにかけて流行している。日本国内では感染症法上の 4 類感染症に指
定されており、2025 年 1 月 19 日までに 252 例が報告されている(クレードⅠa
およびクレード Ib の報告はない)。

3 / 6