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鉄が肝臓を傷つける-新たな細胞死フェロトーシスの正体とは (3 ページ)
出典
公開元URL | https://www.isct.ac.jp/plugins/cms/component_download_file.php?type=2&pageId=&contentsId=1&contentsDataId=1590&prevId=&key=33c418f9d6baec6d5913997f858f0091.pdf&fileName=sciencetokyopr20250530-moroishi |
出典情報 | 鉄が肝臓を傷つける-新たな細胞死フェロトーシスの正体とは(5/30)《東京科学大学、熊本大学》 |
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い、肝臓に鉄を蓄積させた状態で実験を⾏いました。このマウスにさらに鉄を過剰に与
えると、肝臓内の細胞が酸化的ダメージを受けて急激に死に⾄ることが判明し、これが
フェロトーシスによるものであることが確認されました。
さらに、このような肝臓傷害時に共通して現れる遺伝⼦変化を網羅的に解析すること
で、
「iFerroptosis」と名付けた 100 個の特徴的な遺伝⼦群を同定しました。この遺伝⼦
セットは、さまざまな肝疾患マウスモデルやヒトの臨床データにおいても⾼い再現性を
⽰しており、肝臓でフェロトーシスが進⾏しているかどうかを評価する“サイン”として、
信頼性の⾼い指標となり得ることが明らかになりました。
さらに、熊本⼤学病院で肝切除⼿術を受けた肝細胞がん患者のデータを解析した結果、
術前の⾎清鉄濃度が⾼い患者では、術後の肝酵素(AST・ALT、⽤語 5)の回復が遅れ、
肝傷害が持続する傾向があることが⽰されました。⾎清鉄濃度が⾼い患者では、肝臓に
おける鉄の蓄積がフェロトーシス感受性を⾼め、肝虚⾎再灌流傷害に伴う肝細胞死を助
⻑していることが⽰唆されました。
本研究は、フェロトーシスの病的意義をマウスとヒトの両⽅のデータから明らかにし
た点で先駆的であり、鉄代謝の制御が外科的介⼊による肝傷害の予防・管理における新
たな治療標的となる可能性を⽰しています。
●社会的インパクト
本研究成果は、肝疾患の診断や予後予測に新たな視点をもたらすものです。たとえば、
肝臓がんの⼿術や肝移植を⾏う前に、患者の⾎清鉄濃度や肝臓内の鉄蓄積の程度、さら
に iFerroptosis の発現状態を調べることで、術後にどの程度のダメージが⽣じるか、肝
臓がどの程度回復するかを予測できる可能性があります。
また、フェロトーシスを事前に抑制する治療(例:抗酸化薬の投与)を組み合わせる
ことで、患者の予後を⼤きく改善できるような治療法の開発も期待されます。
このように、iFerroptosis を活⽤した診断ツールの開発や、フェロトーシス制御を⽬的
とした新薬の創出といった今後の応⽤展開が期待されます。
●今後の展開
本研究により、肝臓病とフェロトーシスの関係や、フェロトーシスの評価⼿法として
の iFerroptosis の有効性が⽰されました。今後は、⼼臓・腎臓・脳など他の臓器にも同
様のアプローチを応⽤し、フェロトーシスが全⾝に及ぼす影響を広く検討していくこと
が求められます。
また、すでに市場に存在する鉄キレート剤や抗酸化薬をどのように活⽤・最適化し、
フェロトーシスが関与する病態の予防や治療に役⽴てていくかも、今後の臨床研究にお
ける重要な課題となると考えられます。
えると、肝臓内の細胞が酸化的ダメージを受けて急激に死に⾄ることが判明し、これが
フェロトーシスによるものであることが確認されました。
さらに、このような肝臓傷害時に共通して現れる遺伝⼦変化を網羅的に解析すること
で、
「iFerroptosis」と名付けた 100 個の特徴的な遺伝⼦群を同定しました。この遺伝⼦
セットは、さまざまな肝疾患マウスモデルやヒトの臨床データにおいても⾼い再現性を
⽰しており、肝臓でフェロトーシスが進⾏しているかどうかを評価する“サイン”として、
信頼性の⾼い指標となり得ることが明らかになりました。
さらに、熊本⼤学病院で肝切除⼿術を受けた肝細胞がん患者のデータを解析した結果、
術前の⾎清鉄濃度が⾼い患者では、術後の肝酵素(AST・ALT、⽤語 5)の回復が遅れ、
肝傷害が持続する傾向があることが⽰されました。⾎清鉄濃度が⾼い患者では、肝臓に
おける鉄の蓄積がフェロトーシス感受性を⾼め、肝虚⾎再灌流傷害に伴う肝細胞死を助
⻑していることが⽰唆されました。
本研究は、フェロトーシスの病的意義をマウスとヒトの両⽅のデータから明らかにし
た点で先駆的であり、鉄代謝の制御が外科的介⼊による肝傷害の予防・管理における新
たな治療標的となる可能性を⽰しています。
●社会的インパクト
本研究成果は、肝疾患の診断や予後予測に新たな視点をもたらすものです。たとえば、
肝臓がんの⼿術や肝移植を⾏う前に、患者の⾎清鉄濃度や肝臓内の鉄蓄積の程度、さら
に iFerroptosis の発現状態を調べることで、術後にどの程度のダメージが⽣じるか、肝
臓がどの程度回復するかを予測できる可能性があります。
また、フェロトーシスを事前に抑制する治療(例:抗酸化薬の投与)を組み合わせる
ことで、患者の予後を⼤きく改善できるような治療法の開発も期待されます。
このように、iFerroptosis を活⽤した診断ツールの開発や、フェロトーシス制御を⽬的
とした新薬の創出といった今後の応⽤展開が期待されます。
●今後の展開
本研究により、肝臓病とフェロトーシスの関係や、フェロトーシスの評価⼿法として
の iFerroptosis の有効性が⽰されました。今後は、⼼臓・腎臓・脳など他の臓器にも同
様のアプローチを応⽤し、フェロトーシスが全⾝に及ぼす影響を広く検討していくこと
が求められます。
また、すでに市場に存在する鉄キレート剤や抗酸化薬をどのように活⽤・最適化し、
フェロトーシスが関与する病態の予防や治療に役⽴てていくかも、今後の臨床研究にお
ける重要な課題となると考えられます。