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報告書 本編 (3 ページ)

公開元URL https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/what-we-do/csmeeting.html
出典情報 サイバー事案の被害の潜在化防止に向けた検討会 報告書2023(4/6)《警察庁》
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はじめに
サイバーパンク小説の嚆矢とされる「ニューロマンサー」において「電脳世界(サイバー
スペース)」の概念が描かれてから、40 年近くが経過しようとしている。一昔前までは遠い
夢物語のように感じていたが、ここ最近のメタバース等をめぐる動向は、映画や小説の中で
描かれる「電脳世界」の住人として過ごす未来の到来を予感させるには、十分なもののよう
に思う。
かように近年のデジタル化の進展は著しいものがある。
コンビニの支払いはスマホ一つで完結し、レストランや飲み会の予約、会議の開催はオン
ラインで行われることが浸透しつつある。我々が普段意識することのないバックエンドでは、
クラウドサービスが広く利用され、様々なシステムにAI技術が採用されてきており、これ
まで人間が膨大なリソースや時間を費やしても実現が困難であったものなどが手軽に利用
できるようになりつつある。
サイバー空間は、量的に拡大し質的に深化するとともに、実空間との融合が進み、「公共
空間」としての外縁を着実にそして驚くべき速さで広げている。同時に、ひとたびサイバー
事案が発生すると、社会経済活動に多大な影響を及ぼしかねないことは周知のとおりである。
インターネットで検索すれば、毎日のようにサイバー事案のニュースが目に飛び込んでくる。
ランサムウェア感染被害の件数は右肩上がりで増加し、個人情報・機密情報の流出やインタ
ーネットバンキングに係る不正送金等のサイバー事案の例は枚挙にいとまがない。
様々な主体が参画し、公共空間化が進むサイバー空間においては、各主体の関係が複雑に
絡み合い、一部の被害が予想外の形で広範囲に波及する危険がある。これに的確に対処する
ためには、犯人を検挙して犯行の制圧を迅速に行い、また、被害拡大の阻止と被害の未然防
止により、可能な限り「潜在的な被害者」を現実の被害者にしないようにすることが重要で
ある。この点、警察が有する犯罪を捜査する機能と犯罪を予防する機能に対する国民の期待・
要請は大きい。
警察においては、従来、被害の届出により実態把握のための情報を収集していたが、被害
者が刑事処分を望むとは限らず、被害に遭ったことへの引け目や被害者に対する社会的評価
の悪化(レピュテーションリスク)の懸念から被害申告をためらうなど、現実の被害が潜在
化している状況がうかがわれる。また、サイバー空間においては匿名性が悪用され、サイバ
ー事案の中には国家の関与が疑われるものもあるなど、犯行が組織化され手法が洗練されて
きていることから、被害自体の認知や事件捜査が一層困難なものになってきている。このこ
とから、個々の事案から得られる情報が断片的なものにとどまるとしても、それらを幅広く
集め、総合的に分析・検討することで実態を把握し、取締りと対策を効果的に進める必要が
ある。
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