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2025年7⽉8⽇ 歯周病菌と低酸素が多発性硬化症を悪化させる 新たな仕組みを解明 (3 ページ)
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●研究成果
はじめに我々は、P. gingivalis を通常酸素条件下または低酸素条件下でマウス骨髄由
来マクロファージに感染させたところ、低酸素条件では通常酸素条件下よりも、インフ
ラマソームの活性化に伴う IL-1β の産生が増加することを見出しました。
さらに、自然免疫の活性化に重要な因子である toll-interleukin-1 receptor domaincontaining adaptor-inducing interferon-β (TRIF) が、HIF-1α の発現量を制御し、低
酸素環境特異的な P. gingivalis 感染によるインフラマソームの活性化亢進を誘導してい
ることを、遺伝子欠損マウス由来のマクロファージを用いて確認しました。
以上の結果から、低酸素環境における P. gingivalis 感染によって誘導されるインフラ
マソームの活性化亢進には、低酸素環境下で安定化する HIF-1α が重要であることが
示唆されました。
また、自己免疫疾患の一つである多発性硬化症が、この HIF-1α 依存的なインフラマ
ソーム活性化の亢進によって増悪することも、マウスモデルを用いた実験により示され
ました。
●社会的インパクト
本研究成果は、歯周病原細菌によるインフラマソームの活性化が、低酸素環境によっ
て制御されているという新たな知見をもたらしました。さらに、歯周病原細菌が、自己
免疫性神経脱髄疾患である多発性硬化症を増悪させるメカニズムの一端を明らかにし
ました。
●今後の展開
本研究成果は、酸素濃度が歯周病原細菌による全身性炎症につながるという、これま
でにない新たな炎症誘導機構を提案するものです。今後は、歯周病原細菌と関連がある
とされる全身性疾患の治療法確立への貢献も期待されます
【用語説明】
(1)
HIF-1α:Hypoxia inducible factor-1 alpha(低酸素誘導因子)。低酸素状態に
なると細胞質から核内へと移行し、炎症や代謝に関する様々な遺伝子の発現を
制御している。
(2)
インフラマソーム:病原体の感染、宿主代謝産物を感知する細胞質内センサー
分子等によって形成されるタンパク複合体。カスパーゼ-1 の活性化を誘導す
る。
(3)
多発性硬化症:中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患の一つ。欧米を中心に 300 万
人の患者がいる。原因は明らかとなっておらず、病巣にはリンパ球やマクロフ
ァージの浸潤が見られる。
はじめに我々は、P. gingivalis を通常酸素条件下または低酸素条件下でマウス骨髄由
来マクロファージに感染させたところ、低酸素条件では通常酸素条件下よりも、インフ
ラマソームの活性化に伴う IL-1β の産生が増加することを見出しました。
さらに、自然免疫の活性化に重要な因子である toll-interleukin-1 receptor domaincontaining adaptor-inducing interferon-β (TRIF) が、HIF-1α の発現量を制御し、低
酸素環境特異的な P. gingivalis 感染によるインフラマソームの活性化亢進を誘導してい
ることを、遺伝子欠損マウス由来のマクロファージを用いて確認しました。
以上の結果から、低酸素環境における P. gingivalis 感染によって誘導されるインフラ
マソームの活性化亢進には、低酸素環境下で安定化する HIF-1α が重要であることが
示唆されました。
また、自己免疫疾患の一つである多発性硬化症が、この HIF-1α 依存的なインフラマ
ソーム活性化の亢進によって増悪することも、マウスモデルを用いた実験により示され
ました。
●社会的インパクト
本研究成果は、歯周病原細菌によるインフラマソームの活性化が、低酸素環境によっ
て制御されているという新たな知見をもたらしました。さらに、歯周病原細菌が、自己
免疫性神経脱髄疾患である多発性硬化症を増悪させるメカニズムの一端を明らかにし
ました。
●今後の展開
本研究成果は、酸素濃度が歯周病原細菌による全身性炎症につながるという、これま
でにない新たな炎症誘導機構を提案するものです。今後は、歯周病原細菌と関連がある
とされる全身性疾患の治療法確立への貢献も期待されます
【用語説明】
(1)
HIF-1α:Hypoxia inducible factor-1 alpha(低酸素誘導因子)。低酸素状態に
なると細胞質から核内へと移行し、炎症や代謝に関する様々な遺伝子の発現を
制御している。
(2)
インフラマソーム:病原体の感染、宿主代謝産物を感知する細胞質内センサー
分子等によって形成されるタンパク複合体。カスパーゼ-1 の活性化を誘導す
る。
(3)
多発性硬化症:中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患の一つ。欧米を中心に 300 万
人の患者がいる。原因は明らかとなっておらず、病巣にはリンパ球やマクロフ
ァージの浸潤が見られる。