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地域の移動支援としての電動カートが介護予防につながるか (2 ページ)

公開元URL https://www.chiba-u.jp/news/files/pdf/0625-cart2.pdf
出典情報 千葉大学 ニュースリリース 研究・産学連携(6/25)《千葉大学》
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■研究の成果
65 歳以上の高齢者(大阪府河内長野市在住で要支援・要介護認定を受けておらず、地域の移動支援と
して電動カートを月 1 回以上利用している方)78 人を対象に、電動カート運行停止と高齢者の要支援・
要介護リスクとの関連を検証するため、自然実験デザイン注1)の縦断研究注2)を下記の期間で 3 回の調
査を実施しました。
・1回目(運行前)2022 年 7~8 月
・2回目(運行中・停止直後)2023 年 7~8 月*
・3回目(運行停止後)2023 年 11~12 月
(*注:河内長野市では電動カート実証事業が 2023 年 7 月 22 日に終了したため、当該地域に住む対象者は全てこの時
期に利用停止となった。


また、研究の主要評価項目を要支援・要
介護リスク評価尺度点数(以下、リスク点
数)としました。リスク点数は、高齢者の
生活状況や健康状態を把握し、地域の課題
を特定することを目的に実施する介護予
防・日常生活圏域ニーズ調査の必須項目
10 問(バスや電車を使って一人で外出し
ていないか、自分で食品・日用品の買い物
をしていないかなど)および性・年齢を合
図 2 調査時期別のリスク点数の平均点の推移
わせた計 12 項目から構成されています。
合計 48 点満点で、高得点であるほど 3 年
以内の要支援要介護認定の発生が高くなる
ことが確認されています参考文献 3)。
各時点での調査時リスク点数の平均点
は、運行前で 18.6 点、運行中・停止直後も
18.6 点と変わりませんでした。しかし、運
行停止4ヶ月後は 19.1 点と悪化していま
した。1年間の利用頻度別では、週 1 回以
上の利用者(31 人、39.7%)では運行前
で 20.7 点、運行中・停止直後が 20.0 点
とやや改善し、
運行停止4ヶ月後で 21.8 点
と悪化していました (図2)。
運行中・停止直後調査を参照群として、
図3 解析後の調査時期別のリスク点数
運行前と運行停止4ヶ月後を比較したとこ
ろ、対象者全員および月1~3回の利用者では、有意な関連はありませんでした。しかし、週 1 回以上
の利用者では、運行停止4ヶ月後で 1.77(信頼区間:0.31-3.24、 p=0.017)と有意にリスク点数
が高くなり、悪化がみられました (図3)。これは、電動カートが動いている時と比べて、止まった後で
は、リスク点数が 1.77 点上がっており、3年以下の要支援・要介護認定の発生が高くなることを示し
ます。
■今後の展望
今回の検証は、地域の移動支援としての電動カートの持続的な運行が高齢者の介護予防に重要な手段
となり得ることを示唆しています。本研究が、電動カートの持続的な運行を促進し、高齢者の介護予防
の一助となることを期待しています。
■用語解説
注1)自然実験デザイン:研究者が意図的に介入せずに、自然に生じた環境の変化を利用して因果関係
-2-