よむ、つかう、まなぶ。
施設探索システム「ハートマップ」を公開 (2 ページ)
出典
公開元URL | |
出典情報 | ハートマップ(全国インターベンション施設マップ)公開(5/15)《日本心血管インターベンション治療学会》 |
ページ画像
ダウンロードした画像を利用する際は「出典情報」を明記してください。
低解像度画像をダウンロード
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
医師の年齢にも変化が見られます。若手と高齢の医師が治療を行う件数が増えており、経験豊富な中
堅層の医師が不足しているという構造的な問題が浮き彫りになっています。しかも若手医師は都市部の
大病院に集中しており、地方の病院では十分な人材を確保できない状況が続いています。心筋梗塞によ
る死亡率の上昇は、決して見過ごせるものではありません。とりわけ地方の医療体制は危機的な状況に
あります。どの地域でも安心して暮らせる社会を実現するために、迅速な治療体制の整備と、医師の働
き方に対する社会的な支援が求められています。
一般社団法人日本心血管インターベンション治療学会 副理事長
岩手医科大学附属病院 病院長/
岩手医科大学 内科学講座循環器内科分野 主任教授
森野 禎浩
世界有数の急性心筋梗塞救命率を支える日本の医療体制
現在の我が国における急性心筋梗塞の救命率は、世界一といっても過言ではありません。急性心筋梗塞
は、たとえ定期的に健康診断を受けていても、いつ誰に発症するか予測できない疾患です。この疾患の
救命率が劇的に向上した背景には、カテーテルによる経皮的冠動脈インターベンション(PCI)ができる
限り迅速に行われ、途絶した冠動脈血流を一刻も早く再開させる技術の進歩と普及があります。
我が国の特徴は、緊急カテーテル治療を直ちに受けられる病院が全国各地に分散して存在している点
です。これは政策誘導や大きなグランドデザインの結果ではなく、都市部から地方に自然発生的に広ま
ったものであり、各病院やカテーテル治療医、医療スタッフの不断の努力の賜物です。カテーテルによ
る再灌流治療は、わずか 15 分遅れるだけで確実に死亡率が上昇することが知られており、病院到着後
90 分以内の再灌流達成が治療目標とされています。我が国の医師や医療スタッフは、この目標に真摯に
向き合い、大きな自己犠牲の下で高い達成率を維持しています。すなわち、「医療体制」そのものが急
性心筋梗塞の治療成績を決定づけ、助かる未来を守ることと、この体制の維持・効率化を追究すること
は、ほぼ同義なのです。
医師の働き方改革で循環器救急システムの崩壊へ
労働時間の「見える化」で若手医師が敬遠
日本の心筋梗塞治療体制の固有の特徴は、治療医が 3~4 人以下の小規模施設が多いことです。多くの
施設が、治療医の過剰な負担によって支えられてきました。しかし、令和 6 年から本格的に始まった医
師の働き方改革により、診療時間が厳密に計上されるようになると、循環器救急の仕組みが成り立たな
い病院が増えてきています。そもそも自然発生的に形成された循環器救急システムであるため、法律に
則って勤務時間を制限すると、後発地域から一気に崩壊していく危険があります。心筋梗塞の救命率は
医療体制に強く依存しており、体制の普及によって地域の救命率は向上してきました。逆に、地域の診
療体制が崩壊・悪化すれば、それに応じて近隣病院への搬送時間が延び、死亡率の上昇や壊死する心筋
量の増加、ひいては救命後の長期的な心不全リスクの増大に直結します。
医師の働き方改革によって、現場の医師の負担は確実に軽減されている一方、一部の重要な医学領域
では深刻な課題が顕在化しています。特に業務負担の大きい診療科では、労働時間の「見える化」によ
り過酷な勤務実態が明らかとなり、若手医師の敬遠が進んでいます。その結果、美容外科を志望する医
師が急増していることが報道などで広く知られるようになりました。実際、外科医を志望する医師の数
は激減し、一部の地域では「絶滅危惧」とさえ言われています。問題は、外科手術のような高度技術を
要する分野では、医師は一朝一夕には育たず、長年の研鑽が必要であることです。このままでは、十数
年後には国内で手術を提供できる医療機関が激減することが懸念されます。
堅層の医師が不足しているという構造的な問題が浮き彫りになっています。しかも若手医師は都市部の
大病院に集中しており、地方の病院では十分な人材を確保できない状況が続いています。心筋梗塞によ
る死亡率の上昇は、決して見過ごせるものではありません。とりわけ地方の医療体制は危機的な状況に
あります。どの地域でも安心して暮らせる社会を実現するために、迅速な治療体制の整備と、医師の働
き方に対する社会的な支援が求められています。
一般社団法人日本心血管インターベンション治療学会 副理事長
岩手医科大学附属病院 病院長/
岩手医科大学 内科学講座循環器内科分野 主任教授
森野 禎浩
世界有数の急性心筋梗塞救命率を支える日本の医療体制
現在の我が国における急性心筋梗塞の救命率は、世界一といっても過言ではありません。急性心筋梗塞
は、たとえ定期的に健康診断を受けていても、いつ誰に発症するか予測できない疾患です。この疾患の
救命率が劇的に向上した背景には、カテーテルによる経皮的冠動脈インターベンション(PCI)ができる
限り迅速に行われ、途絶した冠動脈血流を一刻も早く再開させる技術の進歩と普及があります。
我が国の特徴は、緊急カテーテル治療を直ちに受けられる病院が全国各地に分散して存在している点
です。これは政策誘導や大きなグランドデザインの結果ではなく、都市部から地方に自然発生的に広ま
ったものであり、各病院やカテーテル治療医、医療スタッフの不断の努力の賜物です。カテーテルによ
る再灌流治療は、わずか 15 分遅れるだけで確実に死亡率が上昇することが知られており、病院到着後
90 分以内の再灌流達成が治療目標とされています。我が国の医師や医療スタッフは、この目標に真摯に
向き合い、大きな自己犠牲の下で高い達成率を維持しています。すなわち、「医療体制」そのものが急
性心筋梗塞の治療成績を決定づけ、助かる未来を守ることと、この体制の維持・効率化を追究すること
は、ほぼ同義なのです。
医師の働き方改革で循環器救急システムの崩壊へ
労働時間の「見える化」で若手医師が敬遠
日本の心筋梗塞治療体制の固有の特徴は、治療医が 3~4 人以下の小規模施設が多いことです。多くの
施設が、治療医の過剰な負担によって支えられてきました。しかし、令和 6 年から本格的に始まった医
師の働き方改革により、診療時間が厳密に計上されるようになると、循環器救急の仕組みが成り立たな
い病院が増えてきています。そもそも自然発生的に形成された循環器救急システムであるため、法律に
則って勤務時間を制限すると、後発地域から一気に崩壊していく危険があります。心筋梗塞の救命率は
医療体制に強く依存しており、体制の普及によって地域の救命率は向上してきました。逆に、地域の診
療体制が崩壊・悪化すれば、それに応じて近隣病院への搬送時間が延び、死亡率の上昇や壊死する心筋
量の増加、ひいては救命後の長期的な心不全リスクの増大に直結します。
医師の働き方改革によって、現場の医師の負担は確実に軽減されている一方、一部の重要な医学領域
では深刻な課題が顕在化しています。特に業務負担の大きい診療科では、労働時間の「見える化」によ
り過酷な勤務実態が明らかとなり、若手医師の敬遠が進んでいます。その結果、美容外科を志望する医
師が急増していることが報道などで広く知られるようになりました。実際、外科医を志望する医師の数
は激減し、一部の地域では「絶滅危惧」とさえ言われています。問題は、外科手術のような高度技術を
要する分野では、医師は一朝一夕には育たず、長年の研鑽が必要であることです。このままでは、十数
年後には国内で手術を提供できる医療機関が激減することが懸念されます。