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国勢調査と人口動態統計の個票データリンケージにより日本人の教育歴ごとの死因別死亡率を初めて推計 (4 ページ)

公開元URL https://www.ncc.go.jp/jp/information/researchtopics/2024/0328/index.html
出典情報 国勢調査と人口動態統計の個票データリンケージにより日本人の教育歴ごとの死因別死亡率を初めて推計(3/28)《国立がん研究センター》
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死因別では、ほとんどの死因で教育歴が短い群で死亡率がより高い(RII が 1 より大きい、かつ、SII が
0 より大きく統計学的に有意である)という関連がみられ(図 3)、死亡率の教育歴による健康格差が大き
な死因は、脳血管疾患、肺がん、虚血性心疾患、胃がんなどでした(表 1)。

図 3. 死因別教育歴別年齢調整死亡率(30-79 歳、2010-2015 年、死因抜粋)

表1. 教育歴による死亡率差が大きな死因順位(SIIの順位: 教育歴が短い群が死亡率が高い傾向にある死因)

男性
順位

女性
*

**

RII
SII
RII*
SII**
死因
(死亡率比) (人口10万人年)
死因
(死亡率比) (人口10万人年)
1 脳血管疾患(I60-69)
1.68
47
脳血管疾患(I60-69)
1.69
28
2 肺がん(C33-34)
1.38
35
肺がん(C33-34)
1.58
15
3 胃がん(C16)
1.45
25
虚血性心疾患(I20-25)
1.58
13
4 虚血性心疾患(I20-25)
1.34
24
胃がん(C16)
1.50
10
5 自殺(X60-84,Y87.0)
1.85
24
肝臓がん(C22)
1.94
10
6 肝疾患(K70-76)
1.97
15
感染症および寄生虫症(A00-B99)
2.07
9
7 糖尿病(E10-14)
2.20
11
腎不全(N17-19)
3.53
9
8 肝臓がん(C22)
1.26
10
肝疾患(K70-76)
2.07
7
* RII: Relative Index of Inequality (人口分布を考慮して教育歴によりどれくらい全体で死亡率比があるかを示す指標)
** SII: Slope Index of Inequality (人口分布を考慮して教育歴によりどれくらい全体で死亡率差があるかを示す指標)

わが国でも教育歴により喫煙率が大きく異なることが報告されており(教育歴が短い群で喫煙率が高
い)、欧米など諸外国と同様に、喫煙や塩分過多などの既知のリスク要因の分布が社会経済状態により
異なることで、死亡率の差につながっている可能性が示されました。一方、女性の乳がんでは「大学以
上卒業者」の方が死亡率が高い(RII が1より小さい)傾向がありました。乳がんのリスク要因として妊娠・
出産歴が少ないなどの生殖関連要因がこれまでの疫学研究により明らかになっており、教育歴が長い
女性の方がこのリスク要因に当てはまる場合が多いことで死亡率が高くなっている可能性が考えられま
す。わが国では公衆衛生と医療技術の向上により、戦後長きにわたって年齢調整死亡率は減少を続け
てきましたが、ほとんどの死因で社会経済状態により死亡率に差があることが明らかになりました。
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