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資料3-3 西浦先生提出資料 (148 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00333.html
出典情報 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(第73回 2/24)《厚生労働省》
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中長期的な SARS-CoV-2 流行リスク評価のための疫学的特徴の捕捉に要する情報と検討
京都大学大学院医学研究科環境衛生学分野
2022 年 2 月 22 日
【背景】 2 月 16 日本会議資料 3-3 にあるように、中長期的な疫学パターンは(1)新しい変異株の出
現、
(2)感受性宿主の変化と獲得免疫、
(3)接触パターンの時間変化や季節性に大きく影響を受けるもの
と考えられる。疫学動態とともに進化動態や接触行動などを把握・検討しつつ、新規変異株の伝播性や病
原性、人口全体の感受性等を検討することを要する。
【検討を要する疫学的特徴】 上記の(1)に対応するため、伝播性および重症度に関する情報は、常に
モニタリングを要する。また、
(1)に加えて(2)の側面を考慮し、既存の獲得免疫に対する新規変異株
の抗原距離や人口レベルでの感受性(或いは免疫保持者割合)を即座に検討することはリスク評価に必
須である。加えて、社会での接触パターンや頻度・空間的拡がりを把握する取り組みにより(3)の情報
を伝播に関連付けて理解することは欠かせない。以下、必要最小限となる必須情報を項目として纏める。
【必須となる関連情報】
A. 伝播性・相対的伝播性の把握:
サーベイランスによる感染者数の時刻変化、世代時間等の自然史を把握するための積極的疫学調査、イ
ベントベースドサーベイランスによる時刻変化の間接的捕捉、変異株置き換え予測のためのスクリーニ
ング検査・全ゲノム検査。加えて、英国における ONS Infection Survey のような社会調査或いは REACT
のような大規模抗原検査を兼ねた疫学調査を通じた感染状況の推論を可能にするデータが必須である。
B. 病原性・毒力の把握:
入院者・重症者・死亡者数に関する継続的モニタリング、重症化や死亡のリスクを推定するための感染
規模捕捉方法(血清疫学調査、大規模抗原検査、上記の社会調査による捕捉)、死因によらない推定のた
めの超過死亡者数の推定
C. 感受性、抗原性・抗原距離の把握:
人口中の免疫保持者割合と免疫失活の程度の把握、血清疫学調査、中和抗体反応(Cartography)やゲ
ノム配列 MDS、時系列の中和反応および T 細胞性反応変化の検討
D. 接触パターンおよび季節性:
社会的接触サーベイ等による接触頻度・パターンの捕捉、滞留人口・移動率を含む位置情報履歴等を利
用した接触頻度評価
【評価】
上記 A・B より図の重大度を既存株との関係の中で評
価する。その中でもリアルタイムでの伝播性や重症度の
推定のためには感染規模を素早く把握するための学術
的な工夫と準備(※)が求められる。人口中の免疫保持
者の把握のために、新規変異株の免疫回避能を検討す
る。A-D を駆使して流行シナリオを検討する。
※発生届に基づくサーベイランスでは感染者の全数が報告されるわけで
なく、流行規模を精密に把握することが困難である。そのため、ONS
Infection survey 或いは REACT のようなリアルタイムのモニタリングを
構築しておくことが必須である。また、リスク評価に合わせて、監視項目
はもとより措置を含む柔軟な変化に対応できる仕組みが求められる。

(パンデミック重大度評価基準.西浦編著「感染症疫学
のためのデータ分析入門」
(金芳堂))

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